リコーとTBMは11月1日、TBMが紙やプラスチックの代替を目指して提供している石灰石(炭酸カルシウム)を50%以上含む、無機フィラー分散系の複合材料「LIMEX」が、リコーのプロダクションプリンタ「RICOH Pro C/Pro Lシリーズ」に対応したことを発表した。

LIMEXは、石灰石と樹脂を混ぜ合わせて製造されるため、水や木をほとんど使わないという特徴がある。そのため、一般的な印刷用紙と比較して場合、LIMEXシートは水の消費量を98%削減することができると言われ、地球環境の保護、中でも水資源や森林資源の保護という点で注目を集めており、これまでにもさまざまな企業と新たな用途開発に向けた取り組みなども進められている。

LIMEXの概要。木材や石油の使用量を削減できる環境に優しい材料となっている

今回のリコーとの協業は、オンデマンド印刷市場向けにプリンタメーカーと連携した取り組みであり、この分野での協業はTBMとしても初めてだという。

TBMとリコーのパートナーシップの概要。リコーとのパートナーシップにより、LIMEXの適用範囲が従来の合成紙分野から、耐水紙やラミネート用紙にも拡大することとなる

今後は、Pro C/Pro Lシリーズを利用している企業内で印刷を内製している販促部門やデザイン広告業、看板内装業などに向けて、リコーの販売網を通じて提供していくほか、リコーのオンラインショップを含め、LIMEXシートの販売を行っていくことが予定されている。

RICOH Pro Cシリーズ/Pro Lシリーズの概要

すでに企業内印刷物や耐水性耐久物などの印刷で用いられるPro Cシリーズ向けには、厚さ300μmのLIMEXシートが適用可能であることが確認されているほか、年内にも厚さ200μmならびに400μmのシートも実用性検証を終える予定だという。

もう一方のサイングラフィック用途などが主であるPro Lシリーズには、インクジェットプリント対応小巻ロールLIMEXとして、白色用紙と半透明用紙の2種類を用意。リコー新規事業本部PP事業部IJ事業推進質の小幡泰三氏は、「重要なのは、数年前にもパルプ(木)を用いない代替用紙が一時的に流行ったが、その時は従来のパルプから生まれた紙に比べ品質が悪く、すぐに流行が終息してしまった。しかしLIMEXは、そうした従来の代替用紙とは異なる製法などを用いることで、どのような大判であっても、従来の印刷に勝るとも劣らない品質を出力することができる」と、その質の高さを評価する。

LIMEXに対応したRICOH Pro C

LIMEXに対応したRICOH Pro L

実際にPro C/Pro Lシリーズにて出力された印刷物。光沢があり、厚みもあるため、高級感を感じさせたい印刷などに向いていると思われる

また、機能性として耐水性を有しているほか、厚みがあり光沢もあるため、高級紙のようにみえることもあるため、メニュー表や高級感を出したい招待状、カレンダーなどにも活用ができるほか、湿気や冷気がかかる場所でも使えることから、冷蔵庫や冷凍庫の内部での利用といったことも考えられるという。

LIMEXと他の用紙の比較(左)と、LIMEX+リコーで生み出される新たな価値のイメージ(右)

ちなみに価格のイメージは、厚み300μmのA4用紙で1枚当たり40円代、200μm厚のもので30円代、400μm厚のもので60円代としており、パウチ加工を施さなくてもラミネート様のプリントが可能であるため、トータルのコストでみれば競争力を十分確保できるという見通しとなっている。

TBMでは、将来的にLIMEXの流通量の増加に併せて、リサイクル(回収)のためのスキームを形成し、さらなる環境負荷低減を目指していくとしている

リコーがこれまで進めてきた環境経営の概要

TBM 代表取締役の山﨑敦義氏は、「地球環境をどう守っていくかという観点からも、LIMEXを近い将来普及させるべく、リコーがこれまで進めてきた環境に対する取り組みを学びつつ、いろいろなアプリケーションへの適用を進めていきたい」と抱負を語る一方、リコージャパン取締役の武田健一氏も、「リコーは環境を意識した経営を進めてきた。今回の提携は、リコージャパンのビジネスコンセプトである"お客様の先のお客様に届く価値"の、さらに先にあるお客様が知らず知らずに社会貢献できる取り組みにつながるもの。リコー単体では限界があるが、パートナーと組むことでそれが具現化できるようになる」とし、LIMEXの提供を通じて、今後、さらなる環境を意識した経営を進めていきたいとしていた。

握手を交わすリコージャパン取締役の武田健一氏(左)とTBM 代表取締役の山﨑敦義氏(右)