九州大学は、同大大学院 総合理工学研究院の森田太智助教と山本直嗣教授が、大阪大学レーザー科学研究所、パデュー大学、光産業創成大学院大学、広島大学、明石高専と協力して、プラズマロケット磁気ノズルのレーザー生成プラズマ噴出方向の制御に成功したことを発表した。この成果は8月21日、学術雑誌「Scientific Reports」に掲載された。

レーザー核融合ロケットの概念図(矢沢サイエンスオフィス提供)(出所:九大Webサイト)

有人火星探査が現実味を帯びる中、従来の化学ロケットでは火星までの往復に長時間を要し、宇宙船乗務員・乗客には心理的な負担に加え、宇宙線被曝や骨密度減少など大きな負荷をかける。そのため、化学ロケットに代わる高速の宇宙船・ロケットが求められている。将来の惑星間・恒星間航行の有力候補とされるレーザー核融合ロケットでは、高速で膨張する核融合プラズマを、強力な磁場で制御し排出します。

制御されたプラズマ噴出(出所:九大Webサイト)

このたび研究チームは、大阪大学レーザー科学研究所のEUVデータベースレーザー(出力エネルギー:6J)を固体に照射することで高速に膨張するプラズマを生成し、複数の電磁石を組み合わせた磁気ノズルで排出プラズマの方向制御が可能であることを実験的に実証した。

さらに、レーザー照射によって生成されるプラズマとその膨張過程を数値シミュレーションで計算することで、この手法の原理が実証可能であることを確認した。

また、引き続き10月16日~20日にかけて、さらに100倍のエネルギーをもつ大阪大学レーザー科学研究所の大型レーザー(激光XII号)を利用して、その性能を向上させるための詳細な実験を行い、この手法の実用化を確信する実験データを得た。

研究チームは今後、実機で想定されるような、さらに1000倍のエネルギーを用いたプラズマロケット磁気ノズルの原理実証を目指して、研究を進めていくとしている。