IDC Japanは10月31日、企業におけるDevOpsの実践状況に関する調査結果を発表した。これによると、DevOpsを実践している企業は20%となり、サービス業の実践率が最も高い結果になったという。

同調査では、サーバ仮想化を実施している企業および組織を対象としたアンケート調査を8月に実施し、515社から有効回答を得た。同社ではDevOpsについて、企業がスピード、生産性、品質などのビジネス能力を高めることを目標とし、ビジネスを支えるアプリケーションの開発から運用までのプロセスを通して複数の組織や担当者が共同で取り組み、そのために必要な方法論と一連のプラクティス(実践)を定義。調査では、DevOps実践の有無に関わらず、DevOpsについて理解している企業を対象とした。

DevOpsの実践状況について調査した結果、「IT組織全体で実践している」という企業は6.6%、「一部の部門/プロジェクトで実践している」は10.5%、「試験的に実践している」は2.9%となり、合計20.0%の企業でDevOpsが実践されており「実践する具体的な計画がある」「実践するかどうかを検討している」「情報収集や勉強をしている」と回答し、DevOpsの実践に向けて動き出している企業も多いということが明らかになったという。

DevOpsの実践状況に関するユーザー調査結果

最もDevOpsの実践率が高い業種は、サービス業(運輸、交通、不動産、レンタル、宿泊、娯楽、そのほか一般サービス)で27.5%になり、IT企業の通信/サービスプロバイダー業(通信、クラウドサービス、インターネットコンテンツプロバイダー、メディア)とソフトウェア/システム開発業(ソフトウェアベンダー、システムインテグレーター)がそれぞれ22.7%と21.4%と続いている。

また、実践する主な要因となったことについて質問したところ、「ITライフサイクルの効率化」が34.0%で最も多く、「ITコストの削減」が31.1%と続いた。企業はDevOpsを実践することにより、開発から運用までに要するプロセスとコストを最適化したいという狙いがあるとしている。また「IT部門とビジネス部門の関係の強化」が29.1%、「開発者の時間とスキルの有効活用」が26.2%となり、組織と人材活用の改善もDevOps実践の動機付けになっているほか、DevOpsを実践している企業の34.0%が「CIO/IT部門のトップ」による強い推進があったことも明らかになったという。

さらに、実践している中で課題になっていることについて質問したところ「取り組んだ効果に対する評価指標が分かりにくい」「各部門間のコミュニケーションが取れていない」「各部門で文化(役割や作業スタイル、価値感など)が異なり統制がとれない」の3項目が27.2%で最も多い回答になった。

特に評価指標の分かりにくさはIT企業での回答が多く、DevOpsの成果を評価できる仕組みが整っていないという。加えて、コミュニケーションと文化の課題はIT企業以外での回答が目立っており、IT部門とビジネス部門との間に壁ができている状況にあるという。

DevOps実践における課題に関するユーザー調査結果(回答上位5項目)

同社のソフトウェア&セキュリティ リサーチマネージャーである入谷光浩氏は「DevOpsを実践しようとしている企業のIT部門は、ビジネス部門との連携を強め、DevOpsのプロセスに適合できる組織と人材の整備を進める必要がある。また、DevOpsの実践効果をしっかり示すことができるように、実践前後で比較できる評価指標を作ることも重要である。DevOpsの効果を経営層やビジネス部門に示すことができればDevOpsはさらに加速し、革新的なビジネスを生む下地になるであろう」と述べている。