京都大学(京大)は10月25日、ヒトiPS細胞由来の3次元的心臓組織を作製し、不整脈の一種であるトルサード・ド・ポアント(TdP)を培養下に再現することに成功したと発表した。

同成果は、京都大学大学院医学研究科の博士課程 川東正英氏、同大学iPS細胞研究所 山下潤教授、同大学医学部附属病院 升本英利特定助教、滋賀医科大学 芦原貴司講師らの研究グループによるもので、10月20日付の英国科学誌「Nature Communications」に掲載された。

TdPは心臓突然死の原因となる不整脈の一種。薬の副作用として現れることがあり、TdPが副作用として現れたために、薬の開発が中断されたり、既に上市された薬が市場から回収されたりすることもある。そのため、開発の早い段階で薬の毒性を評価できるヒトの心臓のモデルが求められていた。

今回、同研究グループは、iPS細胞由来の心筋細胞と間葉系細胞を混合して、2種類の細胞が混ざり合いながら5~6細胞層になっている3次元的心臓組織を作製。従来の細胞レベルでは不可能であったTdPを培養下に再現するモデルの構築に成功した。

純粋な心筋細胞だけでは、たとえ3次元的な構造を作ってもTdPは発生しなかったことから、心筋細胞と間葉系細胞のような性質の異なる細胞が混在した不均一な構造がTdP発生には必須と考えられる。心筋細胞-間葉系細胞の混合培養においても、2次元培養よりも3次元的心臓組織の方がTdPは明らかに高率で発生するという。

今回の成果について同研究グループは、TdPのより詳細なメカニズムの解明や、さまざまな薬の毒性評価に役立つものと説明している。

ヒトiPS細胞由来の3次元的心臓組織 (出所:京大Webサイト)