NECは10月25日、処理性能と拡張性を強化し、HPC(ハイ・パフォーマンス・コンピューティング)領域の科学技術計算に加え、AI・ビッグデータ解析、資源探査、画像解析、セキュリティなどの新しい領域にも利用可能という新プラットフォームである「SX-Aurora TSUBASA(エスエックス・オーロラ・ツバサ)」を、日本国内及び海外向けに販売開始した。今後3年間で1000億円の販売目標を計画している。

新開発のカード型「ベクトルエンジン(VE)」

新製品は最先端のLSIテクノロジーに加え、同社独自という高密度実装技術や高効率冷却技術などで開発したカード型の「ベクトルエンジン(VE)」を搭載。

VEをカード型とし、x86サーバへの搭載を可能とした新アーキテクチャの採用により、ベクトル演算に加えx86で行うスカラ演算の両ニーズに対応した。さらに、VEの搭載数によりエッジ用からデータセンター用までのインアップを揃え、計算能力ニーズに応じた選択を可能にしたという。

同製品は従来機種である「SX-ACE」と比較して、性能あたりの消費電力を5分の1に、設置面積を10分の1に低減したとのことだ。

同製品の特徴として同社は、ベクトルプロセッサのカード型VEへの搭載、オープン環境との融合による使いやすさと利用範囲の拡大、タワー型から大規模システムまで柔軟なシステム構築の3点を挙げる。

新開発したカード型VEに搭載するベクトルプロセッサは、同社調べでは世界初というメモリ搭載構造を採用し、SX-ACEの単一コア性能を約5倍高速化、同社調べでは世界一という単一コア性能となる307GFLOPS(ギガフロップス)、同社調べでは世界一という単一コアメモリ帯域150ギガバイト/秒を実現したコアを8コア採用し、2.45TFLOPS(テラフロップス)の演算性能と1.2TB(テラバイト)/秒のメモリ帯域を実現するという。

これにより、多数のプロセッサが必要というスカラ型並列コンピュータと比較して、少ないプロセッサ数でも、複雑な科学技術計算において高い性能が得られ、並列プログラミングの負担も軽減できるとしている。

オープン環境との融合に関しては、同製品ではx86ホストサーバ(OSはLinux)とカード化したVEが連動して動作する新しいアーキテクチャを採用し、スカラー(x86)向けアプリケーションはホストサーバ側で稼動させ、ベクトル性能が高いアプリケーションはVEで稼動させるなど、より多くのアプリケーションが利用可能なハイブリッド環境を提供するとのこと。

VEの性能を引き出すためのソフトウェア環境としては、従来のSXシリーズ同様に同社独自のベクトルコンパイラ、分散並列化ソフトである「NEC MPI(エムピーアイ)」、分散・並列ファイルシステムである「NEC Scalable Technology FileSystem:ScaTeFS」(スケートエフエス)」、ジョブスケジューラである「NEC Network Queuing System V:NQSV(エヌキューエスブイ)」などのソフトウェアを提供し、高度なアプリケーション開発と安定したシステム運用を支援するという。

エッジ用の「A100-1」(VE数1)

オンサイト用の「A300-2」(VE数2)

同「A300-8」(VE数8)

データセンター用の「A500-64」(VE数64)

システム構築については、同製品はVEをカード化したことにより、エッジ用(VE数1)、オンサイト用(VE数2/4/8)、データセンター用(VE数64)まで、幅広い筐体サイズへの対応が可能となり、計算能力ニーズに応じた選択を可能にしたという。

これにより、従来の大規模データ解析を行っているユーザーに加え、AIやビッグデータ解析を行う企業や研究所の研究者・開発担当者なども、高性能ベクトルマシンを利用可能になったとしている。

なお、1ラックあたりでは最大156TFLOPSのラック演算性能及び76.8TB/秒のメモリ帯域を実現した。ラックの接続数には制限が無く、ユーザーの利用環境に合わせた大規模なシステムを構築可能という。