KDDIは10月24日、都内で記者会見を開き、12月5日から日本を含む37の国と地域において法人の顧客向けにSD-WAN(Software Defined Wide Area Network)技術によるネットワークソリューション「KDDI SD-Network Platform」の提供を開始するほか、セキュアにクラウドサービスの利用が可能な「KDDI Security Cloud」を提供開始すると発表した。

「KDDI SD-Network Platform」の概要

SD-Network Platformは、米Versa NetworksのVNF(Virtualized Network Function)技術を採用し、企業ネットワークにおけるクラウドの利用拡大や事業拡大に伴う拠点の増加、海外への事業展開など、さまざまな変化への対応が求められていることから、新たな回線を敷設することなく、柔軟な制御と可視化、インターネットを活用した通信回路の最適化を実現するという。

KDDI ソリューション事業企画本部 ネットワークサービス企画部部長の梶川真宏氏は「これまで顧客のデータは各拠点ごとに点在し、拠点間を通信する際にVPNサービスが主流となっていた。しかし、現在では点在していたデータをデータセンター(DC)やクラウドに移行・管理しており、ネットワークは閉域網やインターネット、マルチクラウドにより複雑になっている」と指摘。

KDDI ソリューション事業企画本部 ネットワークサービス企画部部長の梶川真宏氏

そのような状況を踏まえ「今後、柔軟に効率よく、安全につなぐ新たなネットワークが必要となる」と、同氏は述べた。SD-Network Platformはさまざまな機能を必要なものだけ追加し、柔軟に提供できる。具体的には、ハードウェアのSD-BOXを設置し、これに可視化やトラッフィックのマルチパス制御などソフトウェアを搭載し、運用・監視、保守などを用途により組み合わせることが可能だという。

主な特徴として「スモールスタート」「パフォーマンス最大化」「クラウドの安全な活用」の3点を挙げていた。

スモールスタートについては、用途に応じた選択・拡張、ビジネス環境の変化に合わせた拡張を可能とし、アプリケーション単位での利用状況、リアルタイムの状況確認などアプリケーション・品質を可視化するという。また、利用中のVPNサービス(KDDI、他社含む)、インターネット回線を活用して迅速に導入でき、モバイル回線も使用を可能としている。

用途に応じた選択・拡張が可能

パフォーマンスの最大化に関しては、VPNとインターネットを組み合わせたハイブリッドネットワークにより、トラフィックの増加に対応し、Office 365など特定のSaaSを拠点から直接インターネット経由で接続できる。

パフォーマンスの最大化の概要

Security Cloudでクラウドの安全な活用を担保

クラウドの安全な活用について梶川氏は「セキュリティが必要なオープンな環境に対しては、Security Cloudで補い、シマンテックと連携しつつ、SaaS、Web、メールのセキュリティを担保する」という。

Security Cloudは、プロキシ型のクラウドセキュリティサービスで、Web・メールやオープンなインターネット上にあるクラウドへの接続を一元的に集約・可視化し、内部データを管理することで、シャドーIT対策やデータ保護を実現し、企業におけるクラウド利用を支援。

また、複数のクラウドサービスに対して、単一のセキュリティポリシーを適用させるCASB(Cloud Access Security Broker)などを含み、SD-Network Platformのローカルブレイクアウト機能と連携し、各拠点から直接インターネットを経由してクラウドサービスに接続する際にも、セキュリティを維持した上で利用できる。さらに、サービスの提供にあたり、シマンテックと連携し、ユーザーの安全な通信環境の構築を実現するとしている。

「KDDI Security Cloud」の概要

今後、SD-Network Platformでは何が起こるかを事前に察知し、ビジネスを止めないソリューションの提供を検討しており、SD-BOXから流れるトラフィックを収集し、傾向を分析・学習するという。

今後検討しているソリューションの概要

KDDIが描く今後の法人サービス戦略

KDDI ソリューション事業企画本部副部長 兼 クラウドサービス企画部部長の藤井彰人氏は「デジタルトランスフォーメーションの実現のためには『価値』『パートナー』『グローバル』の3つが重要となる。われわれでは、顧客に提供する価値ごとにモバイル&IoT、アクセス、コネクト、コンピュート、コラボレート、コミュニケート、クリエイトとプロダクトマネージメントのグループを設け、それらをまとめてマネージドし、セキュリティを確保する。そして、顧客の要望を実現するパートナシップを有し、グローバルにおいて104カ所の拠点、190カ国以上のネットワークサービスなどを活用していく」と強調した。

KDDI ソリューション事業企画本部副部長 兼 クラウドサービス企画部部長の藤井彰人氏

同氏は、今回のSD-Network PlatformとSecurity Cloudに加え、計画段階としているものの、アクセス分野の「SD-Mobile Network」、コンピュート分野の「Portable Cloud Platform」、コミュニケート分野の「UC as a Service」、マネージド分野の「Total Support」について触れた。SD-Mobile Networkは、多様な利用シーン・ビジネスモデルに組み込めるAPI連携と従量課金の課金モデルとし、必要なときに必要なだけ使え、IoTネットワークからSD-WANまで多様なネットワークにアクセス可能な接続性を持たせるという。

「SD-Mobile Network」の概要

Portable Cloud Platformは、同社のベアメタルサーバやAmazon Web Service、Microsoft Azure、Google Cloud Platformまで顧客の多種多様なビジネスを基盤から支援し、ポータルブルなクラウドプラットフォームを展開していく方針だ。

「Portable Cloud Platform」の概要

UC as a Serviceは、0AB-J番号からPBX機能までオフィスに必要な環境をフルクラウドで提供し、Cisco SparkやSkype for Businessを顧客に提案することで、スマートデバイスだけでなく、パソコンや電話機、会議端末でもコミュニケーションを実現していくという。

「UC as a Service」の概要

Total Supportは、クラウド、ネットワーク、セキュリティ、デバイスなど、システムトータルの運用監視をワンストップで提供し、トラブルシューティングの時間短縮のほか、ビジネス成長を支える改善を提案するサービスとして位置づけている。

「Total Support」の概要

なお、SD-Network Platformの価格は専用機器1つあたり月額1万円(ルータ機能、トラフィック可視化、センドバック保守を利用した最小構成の料金。1契約あたりの基本料金は2万円、監視などの料金は別途発生)~、11月1日から申し込みを受付開始、提供開始はSecurity Cloudともに12月5日を予定している。