物質・材料研究機構(NIMS)は、早稲田大学、多摩美術大学と共同で、グラデーション変化する調光ガラスを開発したことを発表した。このガラスは、使用者の好みに合わせて自由に調光範囲を変えることができるため、太陽の高さに合わせて遮光範囲を変えるなど、従来の調光ガラスでは困難だった「遮光と眺望を両立する窓」としての利用が期待されるという。

同成果は、NIMS 機能性材料研究拠点 電子機能高分子グループの樋口昌芳グループリーダーらの研究グループ、早稲田大学ナノ・ライフ創新研究機構、多摩美術大学美術学部との共同研究によるもの。

遮光状態(左端)から透明(右端)にグラデーション変化する調光ガラス(サイズ:20cm×20cm) (出所:物質・材料研究機構 (NIMS) Webサイト)

近年、電気をかけることで遮光状態を変えることができる(エレクトロクロミック方式)調光ガラスは飛行機の窓などに使用されている。しかし、これまでは遮光状態をガラス全体で調整するしかなく、遮光後は窓外の景色を楽しむことはできなかった。

今回、研究グループは、エレクトロクロミック特性を持つポリマー (有機/金属ハイブリッドポリマー) を使用して、グラデーション変化する調光ガラスを開発した。遮光部分の割合を変えるためには、電圧(3V)の印加時間を変えるだけで良く、電源を切ってもそのグラデーション状態が保持される。また、電気を流す方向を変えることで遮光方向も変えられるため、使用者の好みに合わせて自由に調光範囲を変えることができる。

使用した有機/金属ハイブリッドポリマーとそのエレクトロクロミック変化。ポリマーに含まれる鉄イオンの酸化状態 (2価と3価)が電圧印加により変わることで色が変わる (出所:物質・材料研究機構 (NIMS) Webサイト)

今後は、車や飛行機などの乗り物やビルの窓などへの使用に向けた実用化研究を進める予定だとしている。