NTTは、スタジアムなど人が密集し、スマートフォンやタブレット、ノートPCなど無線LAN端末が超過密となる環境において、通信速度を向上させる「分散スマートアンテナ(D-SAS)型協調無線LAN技術」を開発し、スタジアムにおいて従来と比較して2倍以上の通信速度の伝送実験に成功したと発表した。

開発した技術は、アクセスポイント(以下、AP)に実装され、APから張り出して分散配置されたアンテナを選択・制御する「D-SAS制御機能」と、ネットワーク側に実装され、複数のAPを集中制御し、APの性能を最大限に引き出す「D-SAS対応無線リソース制御機能」という2つの要素技術で実現するという。

分散スマートアンテナ型協調無線LAN技術の概要

D-SAS制御機能は、Broadcom社と連携して実現したもので、Broadcom社は無線LANモジュールからパケット単位で高周波(RF)デバイス制御を行うスマートアンテナ制御機能を提供し、NTTはRFデバイス制御アルゴリズム、大規模分散アンテナ構成及びRFデバイス制御信号の開発を行ったという。

本機能を用いることで、アンテナを分散配置させ、端末とAPアンテナの距離を物理的に近づけることができ、それぞれの端末に対して個別に最適なアンテナおよび送信パワーを設定することでエリア内の最低受信パワーを落とさずにエリア外の干渉を低減することを可能にしているという。

D-SAS対応無線リソース制御機能は、制御対象となるAPから取得した干渉となるAPの電波強度などの無線環境情報を用いてアンテナ単位で無線LAN環境を仮想的に構築し、下図のように同環境にて同一無線リソース再利用距離の短縮化を行うことで通信速度の増大を実現するもの。その際、NTTが開発したRATOPアルゴリズムにより算出された最適な無線パラメータを各APに設定することで、無線リソースの最適化を実現することができるという。

D-SAS制御機能とD-SAS対応無線リソース制御機能の効果

これらの技術により、アンテナを同一箇所に集中設置する従来技術と比較して通信速度の向上が可能となるという。

今後は、本技術を無線LANに適用していくことにより、スタジアムのみならず、ホールや駅、ショッピングモールなど超過密となる環境で、動画視聴やイベントでのアプリ一斉利用、そのほか新しいネットワークサービスを支える技術として、さまざまな場所への展開を目指す。