【コラム】極限まで戦い抜いたU17日本代表…悔しさ胸に次の道を歩き出す

ベスト16で破れたU17日本代表 [写真]=佐藤博之

「素晴らしいゲームだったじゃないか。大したもんだよ!」

 4階にある記者席から1階の会見場へ向かう階段を、しょぼくれた表情を浮かべながら下りていると、何となく顔見知りになっていたインド人の記者からそんな熱い激励を受けた。まあ、彼らの英語は大体聞き取れないのだが(イングランド人のスクープ監督も聞き取れずに困惑していたので、単なる英語力の問題ではないはずだと自分をフォローしておきたいが)、そういうニュアンスはしっかり伝わってきた。

 恐らく日本の勇戦奮闘ぶりは彼らの予想を超えたものだったのだろう。会見場でもやっぱり「やり切ったな、日本!」みたいなことを言われたし、ニュースサイトに上がった試合のレポート記事を読んでみても、「日本が頑張った」みたいなことが書いてある。事実、確かに彼らは本当に頑張った。

 10月17日、U-17ワールドカップ・ラウンド16。インド・コルカタの地で大会最強のタレント集団と誉れ高きイングランドの黄金世代と対峙した日本は、粘り強い戦いで0-0からのPK戦までを戦い抜き、敗れた。このチームを2年半にわたって率いた森山佳郎監督の言葉を借りれば、「最後まで諦めずにボールを追いかけて本当に極限まで戦った」末の結果だった。

 グループステージでの日本のパフォーマンスは必ずしも芳しいものではなかった。「あれは油断させるためにやっていたんですよ」と冗談めかして振り返った森山監督は、ただグループステージとノックアウトステージで明確にチームとしてのスタンスを変えたことも明かしている。主導権を握ってボールを支配する形にこだわった戦い方から、相手に持たせる時間も受け入れながら、「相手との力の差も見極めつつ」じっくりと戦い抜く形を採用した。

 イングランドはいつでも真っ向勝負のお国柄であり、試合に応じてやり方を変幻させることもないため、対策自体は立てやすいチームである。10番を背負って、9.5番の仕事をこなすMFアンヘル・ゴメス(ポルトガル代表MFナニの従兄弟である)をキーマンと見立てて彼を消しつつ、両サイドについてはある程度行かれることを覚悟した。絶対的な個々の能力差がある中で、すべてを完璧に守ることはできないと受け入れつつ、守るべきポイントを取捨選択。イングランドの攻撃で最大の脅威となる強気の縦パスを、中央でFWが受けて加速する形を阻みつつ、「外へ外へと追い出す」(森山監督)プランの中で、最後のゴール前の攻防だけは譲らない。リスクはあったが、この強敵の攻勢をしのぐにはこれしかないと絞り出した術策だった。

 前半からハイプレスを仕掛け、縦へ縦へと推進力のある攻撃を繰り返すイングランド。日本は防戦一方と言える時間帯も長かったが、それも織り込み済み。相手の時間帯は全員で守る意識を統一し、隙ができるのを待つ。試合の展開や時間帯、相手の状況を見極めながら試合を運んでいくことは森山監督が口酸っぱく強調してきた要素だったが、この試合ではしっかり選手同士でコミュニケーションも取りながら、やるべきことをやり続けた。

「ほぼプラン通り」(森山監督)の流れから、疲れて足の止まったイングランドに対して後半15分前後から日本が仕掛けるまでは最高のシナリオを描けていた。ただ、画竜点睛を欠いたのは、今度は相手のゴール前でイングランドの守備陣を上回りきることができなかったからだった。再び森山監督の言葉を借りれば、「最後はこちらに流れが来て、コーナーに追い詰めたところで、ダウンが奪えなかった」というところである。終わってみれば、ボコボコにされた前半の印象もあるにもかかわらず(もちろん支配率では大きく劣ったが)、シュート数は13対14とほぼ互角。枠内シュートに関しては日本が上回っているというデータが示すとおりの内容だった。

 無意味であることは百も承知で「たら・れば」を語ってしまうと、前半から飛ばしまくっていたイングランドのスタミナ切れを思えば「もしもこの大会に延長戦が存在していれば」と言いたくなる流れでもあった。もっとも、こんな負け惜しみを語るよりも、終盤に訪れた苦境に対して抑えるべきポイントを抑えきり、最後まで粘り強く戦い抜いた若きスリーライオンズを称賛するほうが健全だろう。彼らはやはり強かった。PK戦も全員が冷静なキックを見せて、5人が成功。「イングランド代表と言えば、PKが苦手」というパブリックイメージもあっさり打破してみせた。

 2000年以降に生まれた選手たちで構成されたU-17日本代表“00ジャパン”の世界舞台での活劇はコルカタのラウンド16にて幕を閉じた。欲を言えば、これほどの緊張感の中で、これほどのクオリティを持った相手と戦えるこういう機会を2度、3度と体感させてあげたかったのだが、いまは各選手がここで感じた悔しさなり反省点なりを、今後の練習や日々の生活に反映させて、より成長していくことを願うばかりだ。

「僕らはこの大会を目指してずっと準備してきたけれど、ここがゴールとも思っていない」

 大会が始まる前に森山監督が残した言葉を、あらためて21人の選手に贈っておきたい。唯一出番のなかったGK鈴木彩艶(浦和ジュニアユース)を含めて、彼らのゴールはこのインドにはない。来年はAFC U-19選手権、再来年はU-20W杯、そして3年後には東京五輪も待っている。もちろん、飛び級してA代表に羽ばたく選手が出てきてもいいし、そろそろJ1リーグで暴れる選手が出てきてもいいころだろう。日本は素晴らしい試合を見せて、それは実に大したものだったけれど、別にここが何かのゴールだったわけではない。

「あの大会で、あの悔しさを経験したから、今の自分がある」

 5年後、10年後の彼らがそう胸を張って振り返ってくれる。そんな未来を強く願うのみである。

文=川端暁彦


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