IDC Japanは10月17日、国内プライベートクラウド市場予測を発表した。これによると2016年の国内プライベートクラウド市場規模は、前年比44.8%増の3093億円となったほか、2016年~2021年の年間平均成長率(CAGR:Compound Annual Growth Rate)は39.0%と予測し、高い成長を見込んでいる。

内プライベートクラウド市場予測、2017年~2021年

国内市場では、従来型ITからクラウドへの移行を進める企業が増加しており、クラウドへの移行をシステム領域別に見ると、電子メール、グループウェア、人事/給与、税務、経費といった汎用業務系システムは、パブリッククラウドSaaSへの移行が顕著だという。

一方、カスタムアプリケーションやアドオン開発を行った基幹系システムは、アプリケーションアーキテクチャを大きく変えることなく、クラウドインフラストラクチャに移行するクラウドイネーブルド(Lift & Shiftと称されることが多い)となるケースが多く見られ、このクラウドイネーブルドが現在の国内プライベートクラウド市場の成長を牽引している。

国内企業のクラウドに対する期待も変化しており、クラウドは登場して以来「IT予算の削減」を導入の期待効果あるいは促進要因として挙げる企業が多かったが、最近ではIT予算の削減よりも「ITセキュリティの強化」や「ビジネスの迅速性の向上」を重要視する企業が増加していると指摘。

また、国内市場ではデジタルトランスフォーメーション(DX:Digital Transformation)に対する関心も高まっており、特定の産業に焦点を合わせ、新しい価値の創出を目的としたソリューションであるインダストリークラウドが急速に発展しているという。

インダストリークラウドでは、AI(Artificial Intelligence)、IoT(Internet of Things)、ブロックチェーンなどの先端技術を活用することが多く、DXのプラットフォームとしてホスティング型プライベートクラウドとして提供されることも多く見られ、DXのプラットフォームとしてのプライベートクラウドが今後の国内プライベートクラウド市場の成長を促進すると予測している。

国内プライベートクラウド市場は「従来型ITからの移行」「DXのプラットフォーム」を両輪として、今後も高い成長を継続すると見込んでいる。同社のITサービス リサーチディレクターである松本聡氏は「国内プライベートクラウド市場は、新たな成長期を迎えようとしている。その成長を牽引するのはDXであり、ユーザー企業がITサプライヤーに求める内容、価値も変化している。一方、インフラストラクチャといった汎用領域では差別化が難しくなっているため、ITサプライヤーは特定業務や産業特化に注力することよって、自らの特徴や優位性を示すことが重要である」と、分析している。