※ 2009/12/24掲載記事の再掲です。

「取り急ぎ連絡まで」とメールを締めくくった後で、この言葉は上司やお客さまに使ってもよい言葉なのだろうか? と疑問に感じたことはないだろうか。

よく聞く言葉だからだれに使っても大丈夫だろうと安易に判断すると、知らずしらずの間に相手に不快な思いをさせてしまう言葉もある。「取り急ぎ」はどんなシチュエーションで誰に対して使ってもよい言葉なのだろうか。

  • 取り急ぎのメール

目上の人には使わないのが無難

ビジネスメール・文書に関する数多くの著書もある平野友朗氏(アイ・コミュニケーション代表)に伺った。

「よく聞く言葉だからでしょうか、お客さまや上司、先輩に送付するメールにも『取り急ぎ連絡まで』などと書いているビジネスパーソンは少なくありません。私は、『取り急ぎ』という言葉は、失礼と感じる人もいれば、便利な言葉と感じる人もいるなど、人によってとらえ方が異なる言葉だと思っています。ですから、親しい上司や先輩以外には使わないのが無難だと考えます」

そもそもの『取り急ぎ』は手紙用語だった

では一体『取り急ぎ』はどんなシチュエーションで使われるべき文言なのだろう。「『取り急ぎ』は元々手紙用語です。現在も、手紙の結びを簡略化したあいさつと理解されています」と言うのは東北大学国語学研究室の大木先生。広辞苑にも、『もろもろの儀礼・説明を省略し用件だけを伝える意』と記されている。儀礼を省略し十分な説明はされていない、というのが言葉に込められたメッセージ。敬意が感じられないと思われても仕方ない。述語を省いた"取り急ぎ~まで"という終わり方は、「さらに相手に対する敬意がないと受け止められる可能性が考えられます」と大木先生は指摘する。

『取り急ぎ』が相手に安心感を与えるケースも

しかし、状況や相手との関係を考え、使ってもよい場面があると平野氏は言う。たとえば、至急返信することによって相手に安心感を与える場合だ。相手が可否の返信を待っているなら、『提起の件、お受け致します。取り急ぎ連絡まで』と即時に返信すれば相手を待たせずに済む。書類が届いた旨を連絡する場合も同様。『取り急ぎ、書類拝受の連絡をさせていただきます』と、伝えれば相手を心配させることもない。確認後には、『書類をお送りいただきありがとうございました。内容も確認させていただきました。その件については……』と後から詳しい状況を伝えれば、上級者の心遣いと言える。

『取り急ぎ』にかわる好感度が高い文言とは?

しかし、急を要していればすべてOKという訳にもいかない。"ぶしつけ"にと思わせるメールは、相手に不快な思いだけを残してしまう。そんな場合はあえて使わず、ほかの言葉に置き換えるとよい。

「『まずは、確認のみの連絡になります。よろしくお願い致します』、『要件のみで、失礼致します』と少し言葉を変えれば敬意が表現できます」(平野氏)。誰にでも使えて無難な言葉なので覚えておいて損はなさそうだ。

相手がどう受け取るかによって言葉のニュアンスは変わる

『取り急ぎ』は、相手や状況によって受け取られ方が違う言葉だ。"急いでいる"、"とりあえず連絡を取るべき"など、双方がお互いの状況を理解している場合は、『取り急ぎ』の一言を使うことで言葉の持つ意味よりももっと多くの情報を相手に伝えることもある。反対に、お互いが状況を理解していないときに使えば、相手に不快な思いをさせてしまうこともある。

「相手が想定していない言葉使いをすると、それが"誤り"、"失礼"などと受け取られてしまうものです」(大木先生)

『取り急ぎ』は、お互いが"急いでいる"状況だということを理解していて、さらに"取りあえず送ります!"と言える間柄なら使ってもよい言葉のようだ。もし少しでも"使っても大丈夫かな?"と不安になるのなら、それは使うべきではないシチュエーション。別の表現を使うほうが無難だろう。

言葉は生き物。相手次第でどうにでも変ぼうを遂げてしまう可能性がある。
「コミュニケーションを普段からしっかりと取っておくことが大切です」(平野氏)。
問題が生じるか生じないかは、すべて人間関係が礎になっていると言えそうだ。

文●山田忍(エフスタイル)