日立製作所は12日、ダイセルの協力のもと、IoTを活用し、経営情報から製造現場の状況までのKPIを一元的に見える化する経営・製造ダッシュボードを開発したことを発表した。

経営・製造ダッシュボードの概念図

同システムは、日立とダイセルが進めている協創プロジェクトの一環として、これまで作業員の逸脱動作や設備不具合の予兆を検知する画像解析システムを通じて収集した製造現場の4M(人、設備、材料、方法)データを活用するとともに、日立のOTとITを融合したIoTプラットフォーム「Lumada」の技術・ノウハウとダイセルの持つ生産ノウハウを生かして開発されたもの。

同4Mデータを用いて、経営者層、工場管理者層、ライン監督者層などの職務階層ごとに、経営改善や生産性向上を図るための意思決定を行うにあたって有用な各種KPIを時系列にグラフ表示する。具体的には、経営者層向けには事業・工場ごとの売上や利益率、キャッシュフローや可動率など、工場管理者層向けには担当工場のラインごとの生産量や可動率、他工場の情報など、ライン監督者層向けには担当ラインごとのサイクルタイムや設備稼働状況、他ラインの情報などをKPIとし、それぞれの階層において全体最適化の観点で状況の把握から課題抽出、評価分析、改善までのサイクルの迅速化が図れるという。

さらに、グローバルに展開している製造現場の情報(加工実績、作業映像など)を統合し、ビッグデータ解析技術を活用して不良発生時の原因分析や改善施策提案を行い、各製造現場にフィードバックすることで、グローバルでの製品品質向上に貢献するとしている。

経営・製造ダッシュボード画面例(左が製造ダッシュボード画面、右が経営ダッシュボード画面)

日立が幅広い製造業へのソリューションを提供してきた実績と、自ら製造業として培ってきたOTのノウハウ、さらには独自のKPIツリーのモデル化技術を生かすことで、現場視点を重視し、改善活動につながる有用なKPIを設定できるという。例えば、ダイセルが重要視するKPIのひとつである「究極の原価管理」実現に向け、実作業時間と標準タクトに対する遅れ、段取り時間、設備起因による待ち時間などの作業実績データを、より上位のKPI(可動率や製造原価など)に紐付けることで、経営層から現場層までのシームレスな分析が可能だという。

また、同システムは、「Lumada」の機能である収集したデータのフォーマットを統一するデータ統合基盤や、多種多様なビックデータを効率良く整理・蓄積するデータレイクを採用することで、見える化・分析を効率的に行える環境を構築する。

なお、両社は今後、開発した経営・製造ダッシュボードを播磨工場をはじめ海外主要6工場への展開を進めるとともに、クラウドを活用した情報の集約と分析を通じてグローバルでの統合管理ソリューションのサービス展開を目指すとしている。