日立製作所は、素材メーカー向けに新材料開発の期間・コストの削減を支援する「材料開発ソリューション」を、11月1日から提供開始すると発表した。価格は個別見積となっている。

同ソリューションは、材料開発に関するシミュレーションデータや実験データといった材料データの高速な分析と可視化を実現する「材料データ分析環境提供サービス」や、同社が材料データを預かりAIなどを活用して分析を代行する「材料データ分析支援サービス」などを提供するもの。従来、新たな材料の開発は、実験と試作を繰り返す手法が一般的だったが、データ処理速度の向上に伴い、コンピュータ解析により材料開発の指針を見出すマテリアルズ・インフォマティクス(MI)が注目されている。同ソリューションの活用により、材料の高性能化につながる要因の予測や特定が可能となるほか、実際の材料を用いた実験前に予備的な分析ができるため、実験回数や関連コストを削減するなど、材料開発の効率化が図れるという。

同ソリューションにおける「材料データ分析環境提供サービス」は、MIに必要となるシステム環境をクラウド形態で提供するサービスで、材料開発に関する膨大なシミュレーションデータや実験データを高速に分析し、磁場や温度、圧力などによって、材料特性の変化がいつ、どの箇所で発生するかをWebブラウザ上でグラフ化や3次元表示することができる。材料データは膨大な件数・容量であることから、従来は、時間短縮のために平均値などの大まかな統計量を利用した分析が一般的だったが、同システムでは、生データの高速分析が可能となっている。研究内容やデータ様式に合わせてシステムをカスタマイズすることも容易なため、研究内容に最適な分析環境を提供可能という。

また、「材料データ分析支援サービス」は、同社が材料のシミュレーションデータや実験データを預かり、機械学習やAIなどを活用してデータ分析を代行し分析結果をレポートするサービスで、対象材料を問わず、組み合わせの自由度が高い有機材料の分析もできる。各種データを用いて多角的に材料特性を推測し、期待する材料特性を実現するための条件を探査するほか、今後の実験候補を提示することも可能となっている。AIの活用により、従来の研究内容から視点を変えた分析を提供できることから、効果的な実験計画を立案・実行できるという。

同社はこれまで、高エネルギー加速器研究機構へMIを活用したデータ分析システムの開発支援や、複数の民間企業とも共同研究や実証事業を推進してきており、同ソリューションは、これらのプロジェクトで得られた、材料特性を予測するなどのノウハウを汎用化したものであり、IoTプラットフォーム「Lumada」のソリューションコアのひとつとなっているということだ。