ワークシェアリングはうまくいかないのか?

 

※2009/01/19掲載記事の再掲です

未曾有の不況の中、人員削減を行う企業が急増するなど雇用情勢が目に見えて悪化している。この状況への対策の一つとして、「ワークシェアリング」に関心が寄せられている。

勤務時間と賃金をカットして雇用を確保する「ワークシェアリング」。以前から話題になることはあっても、なかなか定着していないのが実状のようだ。

そもそも、「ワークシェアリング」とはどういう対策なのだろうか?

「ワークシェアリング」とは?

ワークシェアリングとは、従業員同士で仕事を分け合うこと。

たとえば、今まで9時から18時まで働いていた3名のチームがあったとする。仕事が激減し1名分の仕事がなくなったとしよう。このとき、3名で2名分の仕事を分け合うことを「ワークシェアリング」と言い、1名の解雇を回避することができるメリットがある。当然、1日9時間×2名分の仕事を3名で分け合うのだから、一人当たりの勤務時間は9時間から6時間に減少し、それに伴い給与も少なくなるというデメリットも生じる。

現在の雇用情勢下では、雇用を確保できるこの対策はかなり効果があるのではと思われるのだが、日本でワークシェアリングが機能するには課題が山積みだと指摘する声もある。 ワークシェアリングの実現には、なにが必要なのだろうか。慶應義塾大学商学部 樋口美雄教授にうかがった。

ワークシェアリングが機能するためには

樋口教授によれば、日本でワークシェアリングが機能するためには、以下の3つの課題があると指摘する。

(1)個々人の職務が明確でないため、他人と分け合うことが難しい
(2)労働時間が短縮されることで、労働者は給与が減少することを懸念する。しかし、会社にとっては一人ひとりに支払う手当などを考慮すると、解雇するほどの経費削減につながらないといったデメリットが生じる。
(3)正社員とパート社員の賃金格差が大きく、正社員の勤務時間が短縮されパート社員の勤務時間とかわらなくなったとき、均等処遇が成り立たない。

確かに、緊急対策としてワークシェアリングを導入したとしても、これら課題が根本的に解決されない限り、将来的に定着することは難しいのだろう。

「これら課題は、労使間で議論されるべきです。一つひとつ課題をクリアにしていくことで、『働き方の改革』につなげていく必要があると思います」(樋口教授)

オランダなどワークシェアリングが機能し、「失業率の低下」、労働者の増加による「労働力率の引き上げ」などの効果につながっている国もある。もちろん導入当初は日本と同様の課題があったが、一つひとつ労使間で解決していったのだ。また、賃金格差の課題に関しては、同じ仕事をする人材全てが同等の給与で雇用されるべきだという法律が確立された。そして今ではこの法律は「EU司令」として、EU加盟国全てで取り入れられているといった展開をみせている。

雇用状況が悪化している今、労働者、雇用者双方が「働き方」について改めて考えるときが日本に来ているのかもしれない。

働く者の立場から考えると、確かに給与が減るのはつらいが解雇の可能性を考えるとワークシェアリングもいいかもと考えてしまう。ただ、給与が減ったままであいかわらずの残業続きってことになってはほしくない……、日本人の気質としてそのあたりの意識も変わるときが来ているのだろう。

文●山田忍(エフスタイル)

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