※2010/03/29掲載記事の再掲です

入社して4、5年目にもなれば、20代でも、特定の期限までに製品を開発したり、イベントの企画・運営を一から行ったりといった「プロジェクト」を丸々全部任されることもあるだろう。プロジェクトのリーダーは、全体の計画や仕事の進め方、部下の動かし方まで考えなければならない。通常業務やルーチンワークとは違う発想が必要だ。「初めてプロジェクトを任されたけど、一体何から手をつけていいのか……」と困る人も多いのでは?

そこで今回は、「プロジェクト・マネジメント」を専門に研修・コンサルティングを行うほか、多数の著書を執筆している中嶋秀隆氏に、どんなプロジェクトにも通用する段取り術を教えていただいた。

プロジェクト・マネジメントとは?

中嶋氏が専門としている「プロジェクト・マネジメント」とは、ひとことで言うなら、「プロジェクトを、決まった期限・予算内に、必然的に完成させる技法」のこと。ここ10年ほどで、日本のビジネスパーソンの間でもかなり浸透してきた技法だが、この技法が知られるようになる前は、リーダーが経験と勘を頼りにプロジェクトを進行する、というのが現場の実状だったようだ。

プロジェクト・マネジメントでは、計画・段取りを立てることが重要視される。 「“計画があれば、計画に近いことが起こるが、計画がなければ、どんなことでも起こる”。これは、私の以前の職場の上司がよく言っていた言葉です。計画もなく、行き当たりばったりにプロジェクトを進行することは、まさに“竹槍を持ってミサイルにぶつかる”ようなもの。プロジェクトを成功させるには、計画・段取りが不可欠なのです」(中嶋氏)

どんなプロジェクトにも使える段取りの基本

次に紹介するのは、中嶋氏から教えていただいたプロジェクト・マネジメントの基本中の基本とも言える段取りだ。

1.目標を明確にし、必ず文書化する
2.やるべき作業を洗い出し、リストにする
3.作業にかかる時間を見積もり、ネットワーク図(※)にしてみる
4.スケジュールを作る
5.リスクマネジメント(危機管理)をする

※ネットワーク図:プロジェクト作業を実施順序に従って論理的に並べた図。左から右に時間の流れをとり、各作業の間の依存関係を線で結ぶ。

1~5のような行程を踏んでから実際の作業に入ることで、プロジェクトを計画的に成功まで導くことができる。作業を実施しながら、スケジュールを微調整するなどして進捗をコントロールし、目標を期日までに達成しよう。

この1~5の行程を実行するに当たって、注意点がいくつかある。まず、4で「スケジュール」を作る際には、非現実的で無理のあるスケジュールにしないこと。プロジェクトのメンバーたちが納得できるスケジュールを設定する必要がある。

それから、5の「リスクマネジメント」とは「あらかじめリスクを想定して対策すること」だが、想定されるリスクには、それが起こったらプロジェクトが頓挫してしまうような大きなものと、起こってもそれほど大きな被害にならない小さなものとがある。すべてのリスクを想定した上で、大きなリスクに対してのみ、重点的に対策するのが適切なリスクマネジメントと言える。

リーダーの仕事の約9割はコミュニケーション

プロジェクトを成功に導くには、1~5の行程を踏むことのほか、周囲とのコミュニケーションを積極的にとることも大切。「プロジェクト・リーダーの仕事の約9割は、クライアントや上司、部下とのコミュニケーションです」(同)

やったことのないプロジェクト、未知の業務を任されたときには、社内の経験者に早めに聞いてみることで、アドバイスが得られるし、計画を立てる際の参考にできる。スケジュールについて、全員が納得できるようにメンバーと話し合うのもコミュニケーションの一貫である。

また、プロジェクトを進行していると、周囲から賛成の意見、反対の意見など多数の声が聞こえてくることがある。20代のビジネスパーソンは、複雑かつ面倒な人間関係を避けたがるが、「そうした“社内政治”は人間社会では必ずあるものと覚悟しましょう。多数の人の意見に一つひとつ対処し、たくさんの答えの中から一つの答えを導き出していくのがリーダーの役割なのです」(同)

未知のプロジェクトを任されたときこそ、ステップアップのチャンス

中嶋氏によると、「若いビジネスパーソンがプロジェクトから得られるギフトは3つある」のだそう。一つは、ルーチンワークにはない、エキサイティングで充実した時間。二つ目は、限られた時間の中で、お金、人を動かして目標を達成する、というビジネスのすべてを経験できるということ。そして三つ目は、プロジェクトを通して得られる人脈である。「プロジェクトを任されたときは、成長のための絶好のチャンスと心得て。無理だとか面倒だとか思わず、積極的にチャレンジしてください」(同)

たとえ小さな業務でも、一つのプロジェクトのリーダーを任されたら、上で紹介したプロジェクト・マネジメントの基本である段取り術を実践してみてほしい。実際に一つのプロジェクトを段取り通りに実行して成功に導ければ、今後、未知の大きな業務を任されたときにも応用できるはず。関心のある人は、本などで「プロジェクト・マネジメント」についてさらに知識を深めてみてもいいのでは?

中嶋秀隆氏プロフィール:http://www.planetkk.net/profile/instructor.html
プラネット株式会社:http://www.planetkk.net/index.html
文●本居佳菜子(エフスタイル)