あの坂本龍馬も使った交渉するときに必ず勝てる方法

 

※2010/08/16掲載記事の再掲です

顧客や取引先との商談、同僚にちょっと仕事を頼みたいとき。ビジネスの現場にはさまざまな交渉が発生する。

交渉を成功に導く、つまり相手に自分の要求をのませるには「相手より心理的優位に立ち、交渉のペースをつかむ」、「相手に与えるメリットをうまく伝える」ことなどが鍵になるわけだが、そもそもこちらの立場が圧倒的に弱かったり、相手に魅力的なメリットを掲示できないときの厳しい交渉において、勝ちを得るにはどうすればいいのでしょうか?

今回はそんな弱い立場の交渉において勝利をもぎとるための極意を、交渉術の権威である安藤雅旺氏(NPO法人 日本交渉学会理事)に聞いてみた。

まずは交渉の基本をおさえよう

商談においてもっとも望ましいのはいわゆる「Win-Winの関係」。お互いにとってメリットのあるゴールが見えていれば、交渉も難なく進むだろう。問題は、相手方に与えるメリットが少ないなど、厳しい交渉に臨む場合。どのようなアプローチで交渉すればよいのだろうか?

「典型的な手法は二つ。一つ目は『PITA(ピーター)の法則』と呼ばれるもので、いわゆる『泣き落とし』ですね。交渉相手が苦労人だったりする場合には感情にフォーカスして泣きを入れる手が意外と効果的です。二つ目は交渉決裂によって生じるデメリットを強調する手法。メリットは薄いかもしれないが、合意できなかった場合にデメリットが大きくなりますよと。いわゆる『脅し』をかけるわけです」(安藤氏)

これらは交渉の場においてはよく使われる古典的な手法。交渉相手のタイプに合わせて使い分けると効果的なのだとか。

もし、それが通じない場合は「第三極」を作る手法もあると言う。

「AとBが対立したり、力関係が流動的な場合にはCという第三極の存在がキーになる。交渉相手に影響力のある第三者を間に立てると力関係のバランスが変わり、停滞していた交渉も動き始める可能性が高くなります。ゴルフなど交渉相手との共通の趣味があれば、それを第三極にしても構いません。あくまでゴルフをダシにして相手との関係を変えていくということなので、たんなる接待とはまったく別モノです」

坂本龍馬も使っていた「脅し」のテクニック

これらのテクニックを実際に使い、圧倒的不利な交渉に勝った人物があの坂本龍馬である。1867年4月、龍馬の海援隊が運航していた「いろは丸」と紀州藩が運航していた明光丸が瀬戸内海で衝突。積荷もろともいろは丸は沈没してしまった。相手は徳川御三家の紀州藩。かりに非が相手方にあったとしても、とても海援隊が対抗できる相手ではない。

ところが龍馬は交渉の過程でさまざまな手法を駆使し、紀州藩から八万三千両余の賠償金を勝ち取ってしまう。龍馬は長崎の街において「船を沈めたその償いは、金をとらずに国を取る」という都々逸をはやらせ、紀州藩にプレッシャーかけた。まさに世論を巻き込んだ大掛かりな「脅し」である。

さらに土佐藩の有力者である後藤象二郎を第三極として表に出すなどさまざまな政治的駆け引きの末、多大な賠償金を勝ち取ったといわれる。まさに龍馬ならではの強靱(きょうじん)な交渉力と権謀術数を駆使し、小さい存在が大きな存在を打ち倒した痛快なケースだ。

「バトナ」があれば、心理的に優位に立てる

安藤氏によれば、日ごろから交渉を優位に進めるための下地を作っておくことも大事だという。

「もっとも重要なのは、交渉相手の自分にたいする『依存度』を日ごろから高めておくことです。たとえば相手のウィークポイントをつかみ、自分がそこを埋める存在になってあげる。その支援度が大きくなればなるほど、相手は容易に自分を切ることができなくなる。こうした関係性が、ここぞという場面の交渉においてひじょうに有利に働きます」

ただし、自分は支援しても相手には依存しないことがポイントなのだとか。

「自分自身はいつ交渉決裂しても困らないという状況を作っておきましょう。『BATNA(バトナ)』という交渉用語があるんですが、これは“自分にとってもっとも好ましい代替案”という意味です。かりにその人と交渉が決裂しても、別の交渉相手、つまりバトナを用意しておけば、心理的に優位に立てる。逆に相手にはバトナを持たせないよう、自分と取引が終わると困ってしまう状況を水面下で作っておくことが大事です」

こうした日々の下地作りを入念に行い、泣き落とし、時には脅しやハッタリを駆使しながらベストを尽くせば勝利は見えてくるかもしれない。いずれの手法を使うにしてもおおいに知恵を絞り、そのつど最適な戦略を取ることが大事なのだ。安藤氏いわく「交渉とは忍耐と根気のいる仕事」。厳しい立場の交渉となればなおさらなのかもしれない。

筆者プロフィール:安藤雅旺
人材開発のコンサルティング企業・株式会社ジェックでの営業経験を経て独立。人材開発、キャリア開発の仕事に携わる。人材開発ではコンフクリクトマネジメント、チームマネジメントに関する研修事業を確立する。キャリア開発では、交渉アナリスト資格制度の構築とその普及に努める。また国際人材支援として上海地区を中心に中国進出日系企業で活躍する人材にたいするキャリア支援も行っている。NPO法人日本交渉学会理事、株式会社トランスエージェント代表取締役社長、株式会社オイコス常務取締役を務める。共著に『交渉にゼッタイ強くなる! 心理戦に負けない極意』がある。 NPO法人日本交渉学会:http://nego.jp/

文●田中コジロー

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