北海道大学(北大)などは10月4日、照射する光の波長により光電流や光起電力の向きを制御できる光センサーの開発に成功したと発表した。

同成果は、イムラ・ジャパン、北海道大学電子科学研究所 三澤弘明教授、上野貢生准教授、東京大学大学院理学系研究科 合田圭介教授らの研究グループによるもので、10月3日付の英国科学誌「Nature Communications」に掲載された。

サイズが数~数10nmの金属ナノ微粒子に光を照射すると、金属ナノ微粒子表面の自由電子が集団運動を起こし、金属ナノ微粒子のサイズや形状に応じて特定の色の光を放つ「局在表面プラズモン共鳴」と呼ばれる現象が起こる。

金ナノ微粒子を酸化チタンなどの酸化物半導体基板上に配置し可視光を照射すると、酸化チタンは可視光を吸収することができないが、金ナノ微粒子の局在表面プラズモン共鳴により、金から酸化チタン伝導体へ電子が移動する。そこで今回の研究では、酸化チタンの薄膜層の上側に金ナノ微粒子を、下側に金薄膜を配置し、上側の金ナノ微粒子や下側の金薄膜から酸化チタンへ電子を移動させることで、照射する波長によって光電流や光起電力の方向を反転させることを試みた。

金ナノ微粒子を酸化チタン薄膜上方の内側に配置すると、金ナノ微粒子のプラズモン共鳴波長は650nmに出現する。それより長い波長の赤い光を照射すると、金ナノ微粒子のプラズモンが励起され、金ナノ微粒子から放出された熱電子が酸化チタン薄膜を通り金薄膜へ流れ込む。

一方で、650nmよりも短い波長の緑色の光を照射すると、金薄膜自身の光吸収と金ナノ微粒子の強い光散乱によって金薄膜上に伝搬型表面プラズモンが誘起され、金薄膜から酸化チタン側に電子が流れ込む。流れ込んだ電子は金ナノ微粒子を通り越して電解水溶液に到達し、赤い光を照射したときとは逆向きに電流が流れる。

同研究グループは、これらの電流の流れを目で確認できるような電子回路を設計。照射する光の波長によって光電流の向きが変わることを確認した。また、金ナノ微粒子のサイズや電極間に加える電圧によって、光電流の向きが反転する波長を制御することもできるという。

同研究グループは、今回の光センサーの動作原理を利用することで、インフルエンザの診断や妊娠の判定などを現在よりも高速かつ高精度に行える簡易検査キットの開発や、高感度な光センサーの小型化に繋がるものと説明している。

照射光の波長により光電流と光起電力の向きを制御する光センサーの原理検証。上段:概念図(図中矢印は電流の流れる向き) 下段:実験結果(出所:北大Webサイト)