国立環境研究所(NIES)は、北極圏の気候や環境への影響が懸念されるブラックカーボン(BC)粒子の発生源別の寄与や収支の評価を行ったと発表した。

さまざまな発生源から排出されたブラックカーボン粒子が北極圏へ輸送され、沈着する様子の模式図

同成果は、国立環境研究所の池田恒平特別研究員と谷本浩志室長らの研究グループと、海洋研究開発機構の共同によるもの。詳細は欧州地球科学連合の学術誌「Atmospheric Chemistry and Physics」掲載された。

大気中を浮遊する微小粒子(エアロゾル)の成分の1つで、すす粒子や元素状炭素とも呼ばれているBC粒子は、ディーゼルエンジンの排気ガス、石炭の燃焼、森林火災、薪などバイオマス燃料の燃焼など、炭素を主成分とする燃料が燃焼した際に主に発生する。大気汚染物質であると同時に気候に影響する物質であることから、短寿命気候汚染物質と呼ばれるものの1つだ。

BCは太陽光を吸収する性質があり、大気を加熱したり、積雪や海氷面に沈着して太陽光の反射率を下げ、氷の融解を促進することで、気候変動を加速する可能性が指摘されている。北極圏は地球上で最も速く温暖化が進行している地域であり、北極圏におけるBCの発生源を理解することは重要かつ緊急の課題となっている。

研究グループは、世界各地の発生源から排出されたBC粒子の発生、輸送、変質、沈着を計算できるモデルを用いて、北極圏のBCがどこからどのくらい運ばれて来るのか、といった発生源別の寄与や収支の評価を行った。

今回の研究では、独自に開発した「タグ付き全球化学輸送モデル」を用いて、アジア、北米、欧州、ロシアなど主要な汚染地域からの寄与率を計算した。その結果、北極圏のBCは、地表面ではロシアの人為起源が62%、沈着するBCに対してもロシアの人為起源が35%を占め、共に最大であった。一方、東アジアの人為起源BCは中部対流圏に運ばれるため、北極圏では地表ではなく高度5kmで最大の寄与となり41%を占めていた。また、東アジアは、中部・上部対流圏のBCに対して最も重要な発生源であることが判明した。

これらの結果から、同じ北極圏でも高度によって、主要な発生源が異なっているほか、アジアから運ばれるBCは大気の加熱に影響しているが、積雪や海氷面に沈着して融解を促進することにはあまり影響していないことが示唆されるという。

今回の成果を受けて研究グループは、これらの知見はBCが北極圏の温暖化に及ぼす影響の理解を進め、日本もオブザーバーを務める北極評議会など国際的な対策に貢献するものだとコメントしている。