京都大学(京大)は9月28日、ヒトiPS/ES細胞から、赤血球の産生を促進するタンパク質 エリスロポエチン(EPO)を産生する細胞の作製に成功したと発表した。

同成果は、京都大学iPS細胞研究所(CiRA) 人見浩史研究員、長船健二教授、香川大学 西山成教授らの研究グループによるもので、9月27日付の米国科学誌「Science Translational Medicine」に掲載された。

EPOは、赤血球の産生を促進する因子のひとつであるタンパク質。胎児期には肝臓で産生されるが、成人の場合はほぼ腎臓でのみ産生される。そのため、腎臓に障害が発生するとEPO産生細胞の働きが弱くなり、EPOの量が減少することによって、赤血球の産生量が低下し、腎性貧血という貧血状態になる。腎性貧血の治療法としてこれまでは、人工ヒトEPO製剤が使用されてきたが、EPOの血中濃度を一定に保つことが難しいことやEPO製剤が高価であることなど課題もあった。

今回、同研究グループは、ヒトiPS/ES細胞を、中胚葉や内胚葉へと誘導する因子であるアクチビンなどを加えた培養液で7日間培養した後、別の培養液に変更して14日間培養することで、EPO産生細胞の作製に成功した。

薬剤投与により腎不全と腎性貧血を起こしたマウスの腎臓に、ヒトiPS細胞由来のEPO産生細胞を移植したところ、血液中の赤血球の量を表す指標であるヘマトクリット値が、移植後4週目には正常な値にまで到達し、この効果は28週目まで持続したという。

なお、今回開発した細胞は、EPO産生を刺激する薬剤のスクリーニングにも利用できる可能性が示されていることから、同研究グループは、腎性貧血の新たな治療薬開発にも有用であることが期待されるとしている。

EPO産生細胞の確認。画面中の緑色に染色されている細胞はEPOを産生している。青は細胞核 (出所:京大Webサイト)