TrendForceの半導体メモリ調査部門であるDRAMeXchangeは9月27日、2018年に向けたNAND市場の見通しを発表した。

2016年第3四半期以降、NAND市場における需要は6四半期(1年半)連続で供給を上回っており、供給不足が続いている。2017年に入って以降も、スマートフォンに搭載されるNANDメモリ量の増加とサーバ市場におけるHDDからフラッシュストレージへの代替が大きな需要となっており、NAND市場は拡大を続けてきた。しかし、NANDの供給量の増加は、主なサプライヤのそれぞれの3D-NAND化のペースやその多層化ペースといった技術的制約を受けることから、一般には、予測よりも遅いペースで進んでいる状況となっている。

DRAMeXchangeのアライアン・チェン(Alan Chen)シニア調査マネージャーは、「Samsung Electronics以外のサプライヤにとって、2D-NANDから3D-NAND製造への移行の際のもたつきが、2017年にNANDの供給を逼迫させた主な理由となっており、各社が3D-NANDプロセスを改善し歩留りを上げる過程で、生産ロスが発生したことが、生産能力を向上させたにも関わらず、供給量が追いつかない要因となっていた」と指摘。2018年については、「Samsung以外のサプライヤも64層や72層構造の3D-NAND製品が成熟することが期待される」とし、ビット供給量の成長率は年率42.9%増、ビット需要も同37.7%増という見方を示し、需要と供給のバランスがある程度とれるようになるのではないかとしている。

一時的な供給過剰が予測される2018年第1四半期

ただし、2018年第1四半期のNAND需要は、季節的な影響により、クリスマス・年末商戦で売り上げが上向く2017年第4四半期に比べると、スマートフォン、タブレット、PCなどのエンドデバイスの出荷が急激に減少することもあり、供給不足から一時的に供給過剰に振れる可能性が高い。しかし、その後の調整で、2018年の全体的な市場動向は、安定した需要と供給の均衡に向かうとChen氏は見ている。

これまでSamsung以外のサプライヤは2D-NANDから3D-NANDへと切り替える際の課題解決に時間がかかっていたこともあり、2017年の世界のNANDビット出荷量総額における3D-NANDの割合は約50%と見積もられるが、2018年にはSK Hynix、東芝/Western Digital、Micron Technology/Intelの3グループともに3D-NANDの比率を高めることから、ビット出荷量総額における割合も60~70%に向上することが見込まれるという。

先行するSamsungは、2017年第3四半期より64層の3D-NANDの量産を開始。同第4四半期までに、3D-NANDプロセスが同社の全NANDフラッシュ容量の50%以上を占めるまでに拡大され、2018年にはこの比率は60%~70%に達すると予測される。また、SK Hynixは、これまで48層積層技術を主に採用してきたが、2018年は72層積層技術の比率が高まる見通しだ。同社の生産能力に占める3D-NANDの割合は2017年第4四半期で20~30%とされるが、2018年第4四半期までにこれが40~50%まで拡大されると予測されるとしている。

さらに、東芝とその提携先であるWestern Digitalだが、2017年前半に48層の3D-NANDの生産を開始。2017年第4四半期で、3D-NANDの比率は約30%だがは、3D-NANDプロセスに基づいている。彼らの3D-NANDの目標は、2018年の第4四半期までに全生産量の50%を超えることであるまた、東芝は2017年3月にFab6の建設を開始し、2019年に最新の3D-NAND製品の生産を開始する予定としている。日本の四日市市にあるFab6は、東芝とWestern Digitalの共同投資の予定であったが、ベインキャピタルが率いるコンソーシアムにメモリ事業を売却するという東芝の決定は、Western Digitalとの関係に大きな打撃を与えている。したがって、Fab6がいつ稼働するか依然として不確実である。

そしてMicron TechnologyとIntelだが、2017年前半に32層の3D-NANDフラッシュプロセスを用いた量産を達成し、この第3四半期に64層積層技術に急速に移行を進めていると見られる。現在、64層プロセスは大量生産に必要な歩留まりに達しており、第4四半期中に、3D-NANDプロセスがMicronとIntelのNAND生産能力の40~50%を占めるまでに拡大するとDRAMeXchangeでは見ている。また、まもなくIntelは、中国・大連のNAND工場を拡張し、生産能力を増やすことを決定済みで、これによりIntel-Micronグループの3D-NANDの割合は、2018年の第4四半期にNAND全体の60%~70%に引き上げられるものと予測されるという。