磁壁メモリの実用化へ前進-フェリ磁性体を用いて新たな磁壁移動機構を発見

京都大学は、フェリ磁性体における超高速な磁壁移動を見いだしたと発表した。この新しい移動機構によって磁壁移動速度が従来の数倍(2km/s)になることが明らかとなった。磁壁の移動を利用したメモリは次世代磁気メモリとして期待されており、同成果は、フェリ磁性体を用いることで高速な磁壁メモリが実現可能であることを示唆するものとなる。

同成果は、同大化学研究所の小野輝男 教授、Kim Kab-Jin 助教(現・韓国科学技術院助教)、森山貴広 准教授、Kim Sanghoon 研究員、Kim Duck-Ho 研究員、理学研究科修士課程学生の平田雄翔氏、同修士課程学生東野隆之氏、同博士課程学生の奥野尭也氏、同博士課程学生のHam Wooseung氏、日本大学の塚本新 教授、高麗大学校のLee Kyung-Jin教授、カリフォルニア大学ロサンゼルス校のYaroslav Tserkovnyak教授らの研究グループによるもの。詳細は英国の科学誌「Nature Materials」(オンライン版)に公開された。

磁壁移動型メモリデバイスの模式図。細線をフェリ磁性体にすれば、超高速に動作するメモリが実現可能 (出所:京都大学Webサイト)

強磁性体の磁区と磁区の境界を磁壁と呼び、これは磁場によって移動させることができる。例えば、小さい磁場では、磁壁内部の磁化が固定されて磁壁が動き、ある磁場より大きくなると、磁壁内部の磁化が歳差運動(回転体の回転軸が変化する運動)を伴って磁壁が移動する。このように、強磁性体において磁壁が磁場で移動する機構は知られているが、反強磁性体またはフェリ磁性体での磁壁移動機構はよく分かっていなかった。

今回、研究グループはフェリ磁性体GdFeCoに注目した。フェリ磁性体は逆を向く2種類の磁化を持つため、全体の磁化が0となる磁化補償温度と、全体の角運動量(回転運動の大きさを表す量)が0となる角運動量補償温度を有する。GdFeCoの特徴は、磁化補償温度と角運動量補償温度が違うことで、温度を変化させると、磁化補償温度と角運動量補償温度の影響を別々に調査することができる。これまで、磁化補償温度の影響は調査していたが、角運動量補償温度での磁壁ダイナミクスはよく分かっていなかった。

そこで研究グループは、角運動量補償温度の付近で磁壁の移動速度を調査した。その結果、磁壁移動速度が角運動量補償温度で急激に増加することが分かった。最大速度は約2km/sで、従来の強磁性体での最大速度の数倍になることが分かった。

フェリ磁性体GdFeCoの磁壁移動実験概念図。拡大部分は時価補償温度上下における磁気モーメントの方向 (出所:京都大学Webサイト)

同成果に対して研究グループは、「メモリとしての動作には電流による磁壁移動が不可欠。今後は、同様の磁性体を用いて、電流による磁壁の高速移動を実現することを目指す。電流による磁壁移動の高速動作、補償温度に関する知見が得られ、磁壁メモリの実用化が大きく前進すると期待される」とコメントしている。

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