三菱マテリアルの電子材料事業カンパニーとその連結子会社である三菱マテリアル電子化成は、独自の窒化還元技術により、UV域で従来品の最大7倍の透過性を実現した無機黒色顔料「NITRBLACK UB-1」を開発し、発売した。

UV透過性無機黒色顔料の粉末

高性能化が進む液晶ディスプレイや光学式センサ、レンズなどの製品分野では、外部または内部からの余分な光を遮るために黒色の周辺材が使用されている。その製造には、耐熱性の低い基材を用いる必要があるため、低温処理できることが要求されている。そこで、一般的に活用される熱硬化技術ではなく、黒色顔料を混合した感光性樹脂(光に反応して硬化する樹脂)を用いる光硬化技術が活用されている。光硬化技術には、μm単位の微細なパターンの形状加工にも向いているという利点もある。

しかし、従来品では、光硬化技術によって黒色の周辺材を製造する時に、可視光域だけでなくUV域の光も黒色顔料が吸収してしまうという課題があった。従来品の黒色顔料と感光性樹脂を混合して製造した場合、UV域の光も樹脂に届かないために硬化が不十分となっていた。逆に、光を透過させることによって周辺材の硬化を優先して製造した場合、黒色顔料の添加不足により必要な遮光性(周辺材の黒色濃度)を発揮できていなかった。

今回、同社は可視光域では十分な吸収性能を有して遮光性を発揮する黒色濃度を保ちつつ、UV域では高い透過性を有して周辺材の硬化を促すことができる無機黒色顔料を開発した。同顔料をUVに強く反応して硬化する感光性樹脂と混合して使用することにより、優れた遮光性と硬化性を同時に満たす黒色の周辺材の製造が可能になったという。また、同顔料は、従来品と比べて最大7倍という高いUV域透過率を実現しているという。

光の波長と透過率の関係

なお、同社はNITRBLACK UB-1の販売開始により、今後更なる高性能化が進む液晶ディスプレイや光学式センサ、レンズ向けでの利用拡大のほか、遮光性を有する接着剤など、さらに幅広い用途へ積極的に展開を図っていくとしている。