宇宙航空研究開発機構(JAXA)は9月25日、探査衛星「あらせ」および連携地上ネットワーク観測で、9月4日から10日にかけて発生した一連の大規模な太陽フレアによって引き起こされた宇宙嵐についての発生から終息までの科学データを取得することに成功したと発表した。

探査衛星「あらせ」による太陽フレアの観測イメージ図 (c)JAXA

大きな太陽フレアに伴って太陽から放出されたプラズマの塊が、地球近傍を通過することで、地球周辺の宇宙空間(ジオスペース)に影響を与え、放射線帯、電離圏や地磁気を乱すことがある。この宇宙嵐と呼ばれる現象によって、静止衛星などに障害が発生したり、電離圏が乱れるとGPSによる測位誤差が増えたりするなど、大規模な宇宙嵐は人々の生活にも影響を与えることがある。

宇宙空間での活動が人々の生活に欠かせなくなった現代では、こうしたジオスペースの現象が人間の社会活動にどのような影響を与え、どのような備えをすべきかを知るためにも、太陽活動やジオスペースの観測を行い、宇宙嵐をはじめとするジオスペースに起こる現象をより詳しく調べ、理解していくことが必要とされている。

9月4日から10日にかけて発生した一連の大規模な太陽フレアによって、太陽から突発的にプラズマの塊が放出された。これらの内、9月4日20時28分頃と9月6日11時53分頃に発生した太陽フレアに伴って放出されたプラズマの塊が地球に到達し、地球周辺の宇宙空間に宇宙嵐を発生させた。

今回の研究では、「あらせ」衛星および連携地上ネットワーク観測では、今回の宇宙嵐の発生から終息までの一連の科学データを取得することに成功した。このデータは、宇宙嵐が最も発達したと思われるタイミングで放射線帯外帯の消失を、宇宙嵐による乱れが鎮まる時期には高いエネルギーをもつ電子が増加して放射線帯外帯が再形成することを示している。また、再形成された放射線帯外帯の電子の強度は、宇宙嵐が起こる前よりも強くなっていることが判明した。

放射線帯の模式図 (c)JAXA

今回の成果についてJAXAは、データの解析は現在も続いており、他の観測結果と合わせて、宇宙嵐にともなう放射線帯で何が起こったのかについて詳しく調べていると説明しているほか、解析から得られた新しい知見は、宇宙天気予報の精度を向上させる基礎となるとコメントしている。