ニコニコ生放送でこれからのおやこのかたちについて語りました~アンケートパート~(田中 健)

 

今年4月にニコニコ生放送で放送したトーク番組「これからの"おやこ"のかたち ~第三者が介入する生殖補助医療を考える~」について、3本立てでブログをお届けしています。

ゲストパート、インタビューパートと2回にわたりお届けしてきましたが、今回の"アンケートパート"が最終回です。このパートでは、3つの問いを視聴者のみなさんに投げかけ、これからのおやこのかたちと第三者が介入する生殖補助医療のあり方について一緒に考えていただきました。

このパートの目的は、視聴者のみなさんが「自分だったらどうするか」を実際に考え、さらに多くの人のいろいろな考え方を知っていただける場を作ることでした。

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写真:視聴者からのコメントを拾う運営チーム

 

問いは、インタビューパートのテーマを踏まえたこちらの3つです。

 

1.精子提供に関連し、「親から子どもへの告知」

2.代理母出産に関連し、「子どもをもうける方法」

3.不妊や不妊治療への悩みに関連し、「誰もが排除されない社会」

 

最初の2つは選択式、最後の1つは自由記述式で、意外な結果や実に多様な意見が得られました。ブログでは、番組の時間内ではご紹介できなかった視聴者からのコメントにも触れながら、番組の様子をお届けしていきます。

 


1.親から子どもへの告知


まずは、第三者からの精子提供によって生まれた親子についての問いです。石塚幸子さんのインタビューパートでも書いたとおり、今の日本では精子提供者が匿名制のため、提供を受ける親も生まれてくる子どもも、提供者を知ることができません。また、精子提供によって生まれたことを親から子どもに告げない限り、子どもが事実を知ることはありません。

 

そこで、このような問いを投げかけました。

=====================

<問い>

あなたは親しい友人夫婦から相談を受けました。二人には、精子提供によってもうけた現在18歳の子どもがいます。その子に父親とは遺伝的なつながりがないこと、大学病院を通じて精子提供を受けたが提供者を知ることはできないことを告げようと考えているそうです。あなたがその子だったら、その事実を告知してほしいかどうか、意見を求められました。どう答えますか?

 

<選択肢>

①告知してほしい

②告知してほしくない

③わからない

=====================

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みなさんならどの選択肢を選ぶでしょうか?

結果はこのようになりました。

 

①告知してほしい 30.3%

②告知してほしくない 39.4%

③わからない 30.3%

 

②が少し多いものの、なんとも見事に分かれました。これにはスタジオだけでなく視聴者からも驚きのコメントが出ていました。少ない条件設定の中で答えを出すのは難しかったかもしれませんが、この数値からは意見に大きな偏りがなく価値観の分かれる問題であることが想像できます。視聴者から寄せられたコメントをいくつかご紹介すると、

 

・お子さんとの信頼がちゃんと築けているかが問題だな~

・(結果が分かれるということは)答えがないということかな

・"わからない"を選んだ人の理由はなんだろうね??

・18歳じゃ微妙でしょ

  ー18歳はもう大人でしょ

  ー18歳まで隠すのがダメ

  ー18歳で遅すぎるに賛成

・私は絶対知りたくない

・自分が結婚して子供持ったら知りたいって思うかも

・別に大したことないよって若いうちに言ってほしい

  ー大したことないと小さい子供は受け止められる?

  ーたしかに、告知までしっかり用意して取り組まなきゃ

・親の判断と子供の気持ち、これも個々人で異なりバラバラだからガイドラインはないな

 

このようにさまざまです。興味深かったのは、視聴者同士のコメントで会話が成り立っていることです。第三者が介入する生殖補助医療という繊細なテーマについて知らない人同士が互いの異なる意見に触れ、会話までできているということに驚き、そして嬉しくもありました。

 

次は、"代理母出産と養子縁組のどちらを選ぶか"について親の立場で答える問いです。インタビューパートでご紹介したみっつんさんは、当時住んでいたイギリスで、養子縁組と代理母出産に必要な要件や実現性を検討し、アメリカでの代理母出産を選びました。

 

この問いの舞台は日本。法律や周囲の環境はイギリスとは違います。

みなさんはどの選択肢を選ぶでしょうか。

=====================

<問い>

あなたは親しい友人夫婦から相談を受けました。二人は子どもがほしいと思っていますが、医学的理由により、代理母出産か養子縁組による方法しかありません。代理母出産であれば、血のつながりのある子を得られますが、日本には代理母出産に関する法制度はなく、日本産科婦人科学会の自主規制により事実上禁止されています。海外で行うこともできますが、例え海外で代理母出産により子どもができても、現行の民法では実子とは認められず、戸籍上は養子となります。あなたが同じ立場だったらどの方法を選ぶか、意見を求められました。どう答えますか?

 

<選択肢

①海外での代理母出産

②日本での養子

③子供をもたない

=====================

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"わからない"という選択肢のない、答える側にとっては厳しい問いでしたが、結果はこうなりました。

 

①海外での代理母出産 36.4%

②日本での養子 39.4%

③子供をもたない 24.2%

 

不思議なことに、この問いもどれか1つに偏ることなく、意見が分かれる結果となりました。こちらの問いも設定された情報だけでは判断が難しかったと思います。この結果を見た苛原先生からは「海外での代理母出産にもうまくいくケースだけではなくリスクはあるし、日本での養子もどこからどのように子どもを迎えるのかなど、実際にはもっともっと考えることがある」とおっしゃいました。視聴者のみなさんからも、これだけでは決められない!というコメントを多くいただきました。その中でも、

・代理母かな、血の繋がりは大事

・血より育ての親

・代理母の一年を買う事に抵抗が有る

・血の繋がりを重視するかどうかかなー

と、血のつながりや代理母について言及するコメントが比較的多く、一方で戸籍上の記載(実子か養子か)に関するコメントはありませんでした。

 

 

さて最後は、自由にコメントしてもらう問いです。

「生んでも、生まなくても、生めなくても上下をつけられず、誰もが生きやすい選択ができる社会であってほしい。」インタビューで、不妊カウンセラーの鈴木さんはこうおっしゃっていました。そのような社会に向かうには、私たちはどうすればよいのでしょうか。社会には何が必要なのでしょうか。

これが最後の問いです。

==============

子どもを生める方、生めない方、生まない方など一人一人の状況や価値観も様々な現代では、生きづらさを感じている人がたくさんいます。

誰もが排除されず、生きやすい社会にするためにはどんなことが必要でしょうか?

あなたの考えをお聞かせください。

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視聴者のみなさんの意見を見ていきましょう。

・みんなが寛容になればいい

・自分がどうしたいかの自覚を持つこと

・それぞれの思いを尊重してやれば良いだけ

・中立な報道

・自由度はあったほうがいいよね

 ー自由度を高くするのはわかるけど、どんなものでも悪用される可能性があるんだよなー

・福祉制度を充実させてカウンセラーを増やす

・先入観がなくなれば。教育の仕方によっては変えることができるのでは。

・他人を気にしすぎない。

・地域で子育てしてく

 ーなるほど、地域で育てるってのは理想だな

 ー小さい子に声かけるだけで危険な世の中なのに?

・色々な価値観を聞いても、聞く側に受け止める度量がなければ多様性は持てないね

・集団社会を壊せばいいのでは?集団社会で排除なしは机上でしょ

 ー外に出た人でまた集団作ればいいのよ

 

これは一部ですが、個人の意識に関することから社会のしくみに関することまで、実に多くの真摯なコメントをいただきました。

「集団社会の中で"排除なし"というのは難しいのではないか」というある視聴者コメントについて、武藤先生は「確かになかなか難しいが、排除された人どうしのコミュニティが充実していくとよい。今は、排除された人が同じように排除された人と出会いやすい世の中になってきているのでは。同じ1つの社会で生き続けようとするのを止めてもよいのかもしれないという気もする」とおっしゃっていました。

また、苛原先生からは、「大事なのは、まだ見ぬ子どもの視点で生殖補助医療のあり方を考えること。そのためにはまだまだ議論が必要」とおっしゃっていました。

 

 視聴者からは、番組中のコメントだけでなく、一通のメールが届いていました。第三者が介入する生殖補助医療により子どもをもうけた1人の母親からです。

 メールには、「子どもに出自(提供者の情報)を伝えるのは絶対にタブーだと感じている。また、子どもが何歳になったら(第三者の介入で生まれたことを)告知すればよいか悩んでいる。子どもが結婚するときに相手の方が同じ提供者から生まれた人でないかを調べた方がよいのか、もし調べるならば相手の理解も得なければならずとても複雑な心境だ」ということが書かれていました。

 

 苛原先生によると、日本産科婦人科学会のルールでは、1人の精子提供者から生まれる子どもは10人までと限られているそうです。確率はそう高くはないかもしれませんが、同じ提供者から生まれた子ども同士が出会わないとは限りません。また武藤先生は、「"絶対にタブーだ"と感じてずっと暮らしていくのはとてもつらい。そのつらさを緩めることのできる社会だったらいいと本当に思う」とおっしゃっていました。

 

 さて、3回にわたり詳しくお伝えしてきた今回のイベントはいかがだったでしょうか。なかなかオープンには語られないテーマだからこそ、語る場が必要です。けれど、意図せず誰かを深く傷つけてしまう可能性もあります。みらいのかぞくプロジェクトのメンバーとも何度も議論を重ねて実施したチャレンジングなイベントでした。視聴者のみなさんが本当に温かく真摯に一緒に考えてくださったおかげで、繊細なテーマながらも貴重で有意義な時間にすることができたと思っています。

ただ、誰もが生きづらさを感じない社会にするのは本当に難しい。改めてそう感じたのも事実です。いろいろなおやこのかたちを知り、考えてみる。その過程ができるだけ多くの人に広まっていくための活動を地道に続けることが大事なのだと思いました。

新しい科学技術は、時に私たちの選択肢を増やしてくれます。しかし、それは必ずしも全ての人にとって明るい光となるわけではありません。選択肢が増えるということは、選ぶ・選ばないという分かれ道を作ります。その選択の背景にある価値観や環境の違いが、私たちの間に摩擦を起こすこともあります。そうした科学技術の影の部分にスポットを当て、少しでも明るくしていく。今回のイベントが、そのための場の1つになっていればと願います。



Author
執筆: 田中 健(日本科学未来館 科学コミュニケーター)
大好きな故郷の環境を守りたいとの思いから、地元県庁に入庁。 環境問題への取り組みを通じ、地球の未来について、科学的な視点からより多くの人と一緒に考えていきたいと思うようになり、未来館へ。 趣味は、歌うこと、旅行。 世界の美しい自然をまだまだ見たい!世界遺産もたくさん見たい!

本記事は「日本科学未来館 科学コミュニケーターブログ」から提供を受けております。
著作権は提供各社に帰属します。


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