東芝は9月25日、独自の塗布印刷技術を用いて、樹脂フィルム基板上に作製した5cm×5cmのペロブスカイト太陽電池モジュールで、世界最高クラスのエネルギー変換効率となる10.5%を達成したと発表した。

ペロブスカイト太陽電池は、印刷プロセスで作製できるため低コスト化が可能であり、かつ高い変換効率を実現できるポテンシャルを有する次世代太陽電池として現在、世界中で研究開発が進められている。中でもフィルム状ペロブスカイト太陽電池は、フレキシブルかつ軽量という特徴から、耐荷重性の低い建物への設置や曲面への設置などといった新たな活用が期待されている。

しかし、均一で大面積なペロブスカイト多結晶膜を形成することが難しいという課題があったほか、モジュール作製に必要なスクライブ工程では、フィルム基板が柔らかく刃圧を強くすることができないため、電極上の膜を十分に除去できず、結果的にセル間の抵抗が高くなり変換効率が下がる問題があり、実用化の妨げとなっていた。

今回、東芝では、PEN(ポリエチレンナフタレート)のような樹脂フィルムを基板として用いて、セル構造として150℃以下の温度で作製可能なプレーナ型逆構造を採用したほか、大面積化手法として、有機薄膜太陽電池の研究開発で培ったメニスカス塗布印刷技術を用いることで、CH3NH3PbI3ペロブスカイト多結晶膜の均一成膜に成功。セルごとの特性バラつきを低減させてモジュールとしての効率を向上させたほか、モジュール作製のスクライブプロセスでは、刃圧の最適化と、弱い刃圧でも電極上の膜が良好に除去できる材料の組み合わせにより、ガラス基板を用いた場合と同等レベルにセル間抵抗を減少させ、変換効率を向上させたとする。

なお、同社では今後、ペロブスカイト材料の組成変更やプロセス改善などを進めていくことで、モジュールサイズの拡大と変換効率向上を進めていくことで、結晶シリコン太陽電池に匹敵する効率、および基幹電源並みの発電コスト7円/kWhの実現を目指していくとしている。

開発されたフィルム型ペロブスカイト太陽電池モジュール(左)とプレーナ型逆構造の模式図(右)