MVアグスタRVS#1──選ばれし者たちの特別なバイク

MVアグスタRVS#1──選ばれし者たちの特別なバイク

40〜50代のライダーのなかには、かつてロードレースの世界で連戦連勝を収めて黄金期を築いた「MVアグスタ」というイタリアのメーカーを覚えている人がいるかもしれない。大藪春彦の傑作バイク小説『汚れた英雄』にも登場する名門ブランドだ。このMVアグスタが近年、ラインナップを拡充させてライダーたちの注目を集めている。なかでも、最近発表された限定モデルの『RVS#1』は、選ばれた者しか購入することのできない特別なモーターサイクルだ。

■グランプリ通算270勝! 世界中のバイク乗りが憧れた名門ブランド「MVアグスタ」

MVアグスタは、かつて世界のロードレースシーンを席巻したイタリアの名門ブランドである。その戦績は凄まじく、1950年代から1970年代にかけてMVアグスタがグランプリで挙げた勝利数は通算270勝、タイトル獲得数は37回に及ぶ。



そして、この黄金期に活躍したライダーたちもまた、ジャコモ・アゴスチーニ、ジョン・サーティース、マイク・ヘイルウッド、タルクィニオ・プロヴィーニ…と、モーターサイクル史にキラ星のごとく輝くビッグネームばかり。世界中のバイク乗りにとって、MVアグスタは憧れと羨望の対象だったのだ。



しかし、ヤマハやホンダといった日本メーカーの台頭などにより、MVアグスタは1976年にレース活動を停止し、翌1977年にはブランドも凍結。1992年にイタリアのカジバがブランドを取得してからも数奇な変遷を辿った。その意味では、今のMVアグスタが昔と異なるメーカーであるのも事実だろう。



とはいえ、MVアグスタの根底にあるものは変わっていない。それは、スポーツとしてのモーターサイクルを先進的な発想と技術で作り上げていくというイタリア人の“熱”だ。特に2010年代半ば以降は、矢継ぎ早にラインナップを拡充するなど、新たなMVアグスタの幕開けというべき動きを見せている。



今回の限定モデル『RVS#1』は、新生MVアグスタがスタートさせたプレミアムライン「Limited Run」のブランドとなる『RVS』の1号車にあたる。





■最高出力152psのパワーと160kgの軽量ボディが生み出す『RVS#1』の驚異の加速力

『RVS』とは、「Reparto Veicoli Speciali」というイタリア語の略称で、直訳すれば「特別車両部門」のこと。つまり、MVアグスタブランドのなかでも特別なモーターサイクルを指す。この言葉通り、『RVS#1』の圧倒的な存在感と迫力あるスタイリングには、限定モデルでなければならない特別な雰囲気が横溢している。



ベースとなったのは、ネイキッドモデル『ブルターレ800』の派生バージョンである『ブルターレ800ドラッグスターRR』。フレームサイドには「RVS#1」のロゴマークを装着し、足元には専用にカスタマイズされたKineo製スポークホイール、ピレリ製MT 60 RSタイヤを組み合わせた。ハニカム仕様のシートのステッチは快適性とエルゴノミクスを両立する優れものだ。



パワーユニットはMVアグスタおなじみの並列3気筒798ccで、ピークパワーは150bhp(152.1ps)/1万2000rpm、最大トルクは89Nm(9.08kg-m)/6000rpmという驚くべき数値を叩き出す。ミッションはカセットタイプの6速で、クイックシフターを装備。さらに、そのパワーを活かすために8段階のトラクションコントロールを採用し、ヨーロッパの排ガス規制「ユーロ4」にも適合させている。



面白いのは、このパワーをダイレクトに感じたいライダーのために、電子制御のオフ機能、トルクマネジメント、レスポンスやエンジンブレーキなどに関連する4つのドライブモードを備えていることだ。この辺りもイタリアメーカーらしい熱さを感じさせる仕様といえる。



さらに驚かされるのは、チタン材やカーボンファイバーを多用したパッケージ重量で、なんとウエットで160kgしかないという。これは大型のオフロード車並みだ。この軽量ボディとパワーを数字に紐付けて考えてみてほしい。そこには鳥肌モノの強烈な加速感しか想像できないはずである。





■限定モデルの『RVS#1』を購入できるのは、MVアグスタのオーナーと元オーナーのみ

なによりも『RVS#1』がスペシャルなのは、このモーターサイクルが「購入者を選ぶ」ということだ。



フェラーリなどのスペチアーレや特別な仕様を施したハイエンドカーは、購入希望者を審査し、特別な上顧客のみに限定するといった条件を付けることが時折ある。それはブランドイメージを堅持し、商品としての評価を高める意図があるからだ。また、数を限定しなければ生産計画を立てられないという事情もあるだろう。



しかし、モーターサイクルが購入希望者を限定し、選考するというは極めて異例だ。MVアグスタジャパンによれば、『RVS#1』の購入希望者は「MVアグスタの現オーナー」「MVアグスタを所有したことのあるオーナー」に限定され、そこからイタリアのMVアグスタ本社によって選考されるという。そして、その選考は日本語によるアンケートによって行われる。




もしかすると、MVアグスタの黄金期を知るライダーにとって、『RVS#1』のスタイルは「らしからぬ」ものかもしれない。それでも、モーターサイクルに対するイタリア人の情熱は変わっていない。個人的には、『RVS#1』の設計や生産に関わることができた技術者たちは、「MVアグスタ」というブランドを担った喜びとプライドを感じているに違いない、と想像している。



ちなみに、購入にはもうひとつ条件があるといわれており、それは「購入できるのは1人1台のみ」というもの。もともとMVアグスタはおいそれと所有できない高級モーターサイクルで、日本人のオーナーや元オーナーは極めて限定的となる。そう考えると、日本国内では実車を目にすることも難しくなりそうだ。念のために付記すると、車両価格は529万2000円(消費税込み)で、デリバリーは2017年9月末から。限定台数はアナウンスされていない。




本記事は「エディトゥール」から提供を受けております。
著作権は提供各社に帰属します。

人気記事

一覧

イチオシ記事

新着記事