日本IBMとスタンシステム、愛知時計電機、STNet、大井電気、菱電商事は9月20日、同日から2018年3月まで徳島県において「LPガス自動検針および地域密着型IoTサービス」の普及に向けた実証実験に着手すると発表した。

実証実験の概要

実証実験を通じた狙いは、「LPガス事業のさらなる効率化」「地域密着型IoTネットワークの実現」の2点。LPガス事業のさらなる効率化については、エネルギー源としてのLPガスの重要性が増す中、LPガス事業には検針、保安、配送の各業務の効率化が求められており、これら業務の効率化に向けて、IoT機器向けの低消費電力で長距離通信を実現するLPWA(Low Power Wide Area)の普及が貢献するものと考えているという。

そこで、各社はLPWAの1つであるLoRaWANネットワークを構築。LPガス事業における自動検針、配送計画最適化および需要家サービスの仕組みを構築し、徳島県内での実証に着手する。実証実験の成果をベースに、地域のLPガス事業者の課題を解決するLPガス向けソリューションとして、他地域も視野に事業展開を進めていく。

地域密着型IoTネットワークの実現に関しては、構築したLoRaWANネットワークはLPガス用途に加え、地域の課題を解決するIoTの導入や地域コミュニティを生かした新サービスへ活用できるため、実証実験を通じて、地域の産学官と連携し、さまざまなテーマに取り組むことで、徳島県全体での地域密着型IoTネットワークサービスの事業化を進めていく考えだ。

実証実験のステップ

実証実験での各社の役割として日本IBMはIBM Cloud上でLoRaWANのネットワークサーバーシステムを運用するとともに、これまでのサプライチェーン分野での経験やソリューションを活かし、LPガス事業の効率化に向けて取り組む。

スタンシステム(スタン、ニューメディア徳島)は、コーディネーション、県内でのLoRaWANゲートウェイ設置、LoRaWAN用ネットワークサーバシステムの構築・運用、LoRaWAN対応の端末・ガスメーターを同社の需要家宅に設置し、自動検針・配送最適化・需要家サービスシステムを開発・実証、地域密着型のIoTサービス普及のための支援活動を実施する。

愛知時計電機は、LoRaWANにメーターを接続する際の最適技術の開発・自動検針データを活用したシリンダー配送の合理化などでLPガス事業の業務改革を支援。STNetは、LoRaWANゲートウェイの上位ネットワーク構築、LoRaWANに加えて、ソニーが開発したLPWAを使った実証実験を支援するほか、実証実験における技術支援を行う。

大井電気は、LoRaWAN対応各種通信端末の開発と導入実績を生かし、LPガス事業に適した通信端末を提供、菱電商事はLoRaWANゲートウェイを設定・保守管理し、エンド・ツー・エンドで検証を行い、IoT活用によるLPガス事業の付加価値創出に取り組む。

各社では実証実験と並行して、地方でのIoT導入促進に向けたコミュニティの形成にも取り組む。地方におけるIoTの普及のためには、解決すべき具体的な課題の明確化と、その課題解決をサポートする産学官のコミュニティが欠かせないことから、コミュニティ立ち上げのために、実証の一環として、すでに徳島IoT活用研究会を立ち上げている徳島経済研究所と協力する。今年度内に「LPWAを活用したIoTサービス開発のワークショップ」などを開催し、多くの企業・団体の参加を呼びかけるという。

また、現時点でソニーセミコンダクタソリューションズと、楽天コミュニケーションズが実証実験に協力を表明している。

ソニーセミコンダクタソリューションズは、ソニーの開発したLPWA技術を用いて、LPガス事業などさまざまな分野における同技術の有効性を検証するために、実フィールドにおける伝送実験や業務車両などの移動物体の監視への適用に関する実証実験などを行う。楽天コミュニケーションズは、LPWA技術を活用した農業分野と観光分野へのIoT実装を検討するほか、実装経験を生かして他分野への展開についても検討を行い、楽天コミュニケーションズの保有しているネットワーク/クラウドアセットとの連携に向けて取り組む方針だ。