レスター大学をはじめとする国際研究チームは、物理法則が宇宙のどこでも同じなのか、それとも地球の周囲と遠く離れた場所では物理法則も異なるのかという問題を調べるための実験を開始した。白色矮星の観測データを利用して検証するという。研究論文は「Universe」に掲載された。

白色矮星の観測データをもとに、強い重力の影響によって微細構造定数が変化するかどうかを調べる(出所;レスター大学)

高温高密度で重力の強い白色矮星の大気中で、微細構造定数αが地球上と同じ値をとっているかどうかを調べる。微細構造定数は、原子スペクトルの微細構造を説明するために導入された普遍定数であり、その値はα=7.2973506×10-3(およそ1/137)とされる。

白色矮星は太陽の半分程度の質量が、地球と同程度の大きさまで圧縮された天体であり、非常に強い重力場をもつ。その大気の表層には鉄やニッケルといった金属成分が浮遊しているとみられている。今回の研究では、白色矮星の深部で発生し金属層を通り抜けて外部に出てきた光を観測し、その光の波長の情報をもとに、微細構造定数が地球上とくらべて変化するかどうかを調べる。

ハッブル宇宙望遠鏡で観測した白色矮星「G191-B2B」のデータを利用し、遠紫外スペクトル観測、原子物理、白色矮星の大気モデリングなどを組み合わせて、重力に依存する微細構造定数の変化について検証する。微細構造定数が重力によって変化している場合には、分光した光の中に表れるスペクトル線が通常の位置からずれると考えられる。このずれが実際に起こるかどうかを詳細に検証していく。

初期段階での分析結果も出始めているが、いまのところはまだ、微細構造定数に重力依存性があるかどうかについては「どちらともいえない」とのことで、今後さらに詳細な分析を続けていくという。

プロジェクトには、英国、米国、フランス、オランダ、オーストラリアなど各国研究者が参加。レスター大学のMartin Barstow教授は、今回の研究について「地球の近傍以外での宇宙の働きに関する我われの理解を検証するものであり、研究結果によっては現在の宇宙論の概念が変わることになるだろう」とコメントしている。