NICTネットワークシステム研究所は、早稲田大学理工学術院 川西哲也教授と共同で、多数の光信号を同時に受信し、高速に電気信号に変換する高速集積型受光素子を開発したことを発表した。この成果は、9月にスウェーデンで開催される光通信・光デバイスの世界最高峰国際会議「ECOC 2017」で発表される。

高速集積型受光素子の構造と処理イメージ

膨大な情報が集中するネットワークの幹線やデータセンタでは、光ファイバや通信装置の設置スペースや消費電力の削減が課題となっている。NICTは産学と連携し、1本の光ファイバの中に7から36個の光通信路(コア)を収めたマルチコアファイバを開発し、マルチ伝搬モードも利用したマルチコアファイバ1本で従来の100本分以上に相当する通信容量を達成した。一方で、コア数の増加につれて受信器の占有体積が大きくなるため、通信システム全体の省スペース・省電力化が重要で光受信器の小型化が望まれていた。

NICTと早稲田大学は、光通信において波長多重伝送をはじめ将来のマルチコアファイバ等の多チャネル光信号の一括受信を可能とする集積型受光素子を開発した。 同素子は、約0.1mm2に32個の受光部を集積しており、光通信において多チャネルの光信号を一括受信し、チャネル別に10GHz以上の高速電気信号に変換する。このため、光受信器数を大幅に削減して省スペース化を行うとともに、各光受信器が搭載する消費電力の大きい信号処理回路を1つに集約することで省電力化を可能にする。

今回、この同素子をマルチコアファイバ、マルチモードファイバと直結して光信号の受信に成功したことで、将来の光ファイバ用超小型受信器の実現性を確認した。

また、同素子は2次元面上に到来する赤外光の強さと位相差を計測でき、イメージセンサやレーザ測距等への応用も期待される。CCDイメージセンサと比較して約1,000倍~10,000倍高速な10GHz以上で並列動作し、集積数を高めても動作速度への影響は小さく、フレームレートの高いイメージング等に有効と考えられるとしている。

今後は、同素子の実用化に向け、さらに集積度の向上や小型パッケージ化等に取り組むとともに、光通信分野以外のイメージセンサやレーザ測距等への応用も開拓したいと考えているとのことだ。