ヤマハは9月13日、ルータシリーズ製品の新ラインアップとして従来モデル「RTX810」との互換性を維持しつつ、性能向上とクラウドサービスなどの新規ネットワークへの接続性を充実させた4ポートL2スイッチの最新モデル「RTX830」を10月に発売すると発表した。これにより、企業のWAN環境の変化に対応し、SD-WANを実現するという。年間6万台の販売を計画している。

「RTX830」の外観

新ルータは、新たにネットワークを構築することに加え、新旧ネットワークの共存環境を実現することも可能なほか、同社の提供するクラウド型のネットワーク統合管理サービス「YNO(Yamaha Network Organizer)」との連携強化により、ネットワークの一元管理や拠点端末の設置作業を効率化するゼロタッチコンフィグレーション機能などを実現。

特徴として、ネットワーク構築にさらなる利便性とYNOとの連携によるSD-WAN実現の2点を同社は挙げている。ネットワーク構築の利便性に関しては「マルチポイントトンネル機能」「最新のLANマップ機能」「USBシリアルによるコンソール接続」「FQDN(Fully Qualified Domain Name) filter(FQDN ルーティング)」「クラウド接続のかんたん設定」の機能実装により、旧来からの拠点間通信やLAN管理の利便性を向上させている。

ヤマハSD-WANの概要

マルチポイントトンネル機能は、物理的な複数拠点へのVPN接続を1つのVPN設定のみで実現。マルチポイントトンネルの拠点側機能に対応(マルチポイントトンネルのセンター側機能は「RTX1210」で対応し、今後「RTX3500」「RTX5000」でも対応予定)し、拠点の増設・移設などVPN環境に変化があった場合の設定変更作業の手間を軽減できるとしている。

マルチポイントトンネル機能の概要

LANマップ機能は、RTX1210のLANマップ機能を採用。LANの状態を可視化し、制御するGUI機能により、ネットワークの接続状態を一目で把握できるため、迅速なトラブルの発見・解決を可能としている。USBシリアルによるコンソール接続は、旧来のシリアルポートに加え、USBmini型のシリアル接続を可能とし、PCへの接続に際して、別途USBシリアル変換ケーブルを用意する必要がないという。

LANマップ機能の概要

FQDN filterは、宛先のFQDNにより、経路制御を行うことができるようになり、インターネット上に展開される各種Web サイトごとに、宛先経路を振り分けることができる。同機能により、拠点ネットワークからインターネットへの接続時、サイトAへの接続はセンター拠点経由、サイトBへの接続は直接インターネットへオフロードするなど、FQDNごとに宛先経路を振り分けるといった運用を可能としている。

FQDN filterの概要

クラウド接続のかんたん設定は、クラウドサービスへのVPN接続利用を効率よく実現し、サービス元から入手したIDやシークレットキーの入力を行えば、IPsecVPN・BGP経路設定などの設定を自動生成し、ルーターに反映され、クラウドサービスへの接続設定にかかる手間が軽減されるという。

クラウド接続のかんたん設定の概要

YNOとの連携によるSD-WAN実現に関しては「GUI Forwarder」「ゼロタッチコンフィグレーション機能」「DPI機能とYNO連携」といったサービスを今後追加する予定だ。

YNOとの連携により、ネットワークの設置・変更時に、個々のRTX830へログインする必要はなくなり、YNOにログインすれば、すべてのネットワークを一元的に管理することができる。さらに、クラウドサービスやインターネット上のWebサービスの業務利用の増加に伴い、運用中にネットワーク設定の変更が必要になった場合でも柔軟な対応を可能とし、YNOとの連携で「動くネットワーク」の管理をサポートするとしている。

YNOとの連携の概要

GUI Forwarderは、個々の拠点端末へ個別にログインすることなく、YNOの画面上ですべてのネットワーク機器のGUI画面操作が可能。

GUI Forwarderの概要

ゼロタッチコンフィグレーション機能は、今後設置する拠点端末の設定を、事前にYNOに保存することを可能とし、拠点端末の設置作業はインターネットへの接続設定とプレースIDの入力だけとなり、スピーディーな拠点展開ができるという。

ゼロタッチコンフィグレーション機能の概要

DPI機能とYNO連携は、今後RTX830はDPI(Deep Packet Inspection)機能の実装を計画しており、アプリケーション単位での細かな設定を多拠点展開で利用するために、YNOを利用した一元管理環境を提供する予定だ。

DPI機能とYNO連携の概要

そのほか、従来モデルからの性能向上と互換性を確保している。性能面の向上ではRTX810に比べ、VPN対地数性能を向上したことで、これまで構成されていた拠点間VPNに加え、クラウドサービスへのVPN接続や、外出先からのリモートアクセスVPNなど、幅広くVPN構成を拡張することができるという。

加えて、昨今のインターネットへのアクセス増加を踏まえ、従来モデルのNATセッション数では性能不足となる場合が増えているものの、新ルータはNATセッション数の向上を図り、外部サービスの利用にストレスのない運用を可能としている。これら性能面を向上しつつ、全体の低消費電力化を図り、最大消費電力はRTX810と同等数値を実現しているという。

互換性の確保では、筐体サイズや接続ポートの互換性に加え、従来モデルで利用していた設定を新ルータでも、そのまま利用することを可能とし、機器入れ替え時も設置場所の変更や設定の再作成などの手間は不要としている。

価格は、いずれも税別で本体が7万5000円、発売中の関連オプションであるラックマウントキットとウォールマウントキットが各1万8000円、RJ-45コンソールケーブルが4800円。