富士通は、心臓シミュレータのデータをVRにより立体的に表示する心臓ビューアーを、東京大学の大学3年生を対象とした医学部の心電図講義に提供すると発表した。

心臓ビューアーの立体視イメージ(出所:富士通プレスリリース)

心臓ビューアーは、同社と東京大学が共同で開発を行っている、スーパーコンピュータ「京」やPCクラスタを用いてシミュレーションを行う心臓シミュレータの出力データをコンテンツとして利用したもの。心臓は体内の中でも最も難解な構造を持ち、複雑な動きや血流の動きを文献などで学ぶのは難しいとされており、なかでも、医学生が初期に学習する心電図の示す波形と興奮伝播の相関についての理解が困難であると言われている。

今回提供される心臓シミュレータのデータは、心臓の拍動を心筋細胞のレベルから精密に再現したものとなる。教材向けに用意されたデータを立体的に見ることができる専用ビューアーを活用し、VRにより360度立体的に確認することができる。これにより、心臓の内部・外部の構造をはじめ、リアルな心筋の挙動、詳細な血管網や血流の様子、興奮伝播の拡散などを、3Dモデルで学ぶことができる。内部までリアルに再現された3Dモデルは、回転や拡張、断面など、多様な視点から観察することができ、健康な心臓のほか、心筋梗塞、致死性不整脈、左脚ブロックなど疾患時のシミュレーションデータも用意されているので、正常時の心臓の挙動と比較しながら学習を進めることができるという。

講義の開催日は9月13日、受講するのは東京大学3年の医学部生約110名。学生は、プロジェクターで映し出された心臓のシミュレーションモデルを、立体的に見ることができ、講師は、正常時と異常時の興奮伝播の3Dモデルを、360度回転させたり、断面の状態を見せるなど、簡単な操作で動かしながら説明するという。同社は、同講義の活用を通して得た結果を踏まえ、より多様な心臓シミュレーションモデルの開発を進め、2017年度中に教育機関や医療機関向けに心臓ビューアーを教材ソフトウェアとして販売する予定だ。