Micronが台湾で20億ドルの設備投資を計画

台湾の複数のメディアが9月7日および8日にかけて伝えた情報によると、米Micron Technologyは、台湾で向こう数年間にわたり、毎年20億ドル規模のDRAM製造に向けた設備投資を進め、台湾を同社のDRAM製造(前工程だけではなく後工程も含む)における中核拠点化する意向を示し、今後18か月で1500人の従業員を新たに雇用するとしている。

同社は現在、台中市の中部科学工業園区で、経営破たんしたタッチパネル部品製造の達鴻先進科技(Cando)と台湾におけるタッチパネル大手である宸鴻光電科技(TPK)の子会社から買い取った2つの工場を改修し、DRAM後工程(実装・検査)工場への転換を進めている。最先端の自動化ラインを導入したこれらの工場は、2018年の量産開始が見込まれている。

また、台中市と桃園市にはそれぞれDRAMの前工程工場(300mmウェハファブ)が稼働しており、Micronの全DRAM生産量の6割以上を占めるまでに規模を拡大している。現在は、台中市のMicron Memory Taiwan工場での1X世代のDRAM量産を促進するとともに、桃園市のMicron Memory Taiwan工場でも2018年から1X世代のDRAM生産を開始する計画だという。

MicronのDRAM技術が中国に流出

そうした積極的な台湾への投資の一方で、同じく台湾の複数のメディアが、「台湾第2位のファウンドリであるUMCと3人の同社従業員が、9月6日、Micronの台湾現地法人の営業秘密の盗難と不正使用の容疑で台中地方検察庁に起訴された」と報じている。Micronも被害届を出して模様で、起訴状によると、3名のうち2名は最近MicronからUMCへ転職した人物であるという。当該の2名は、以前Micronの現地採用者として勤務していた際、DRAMチップの製造技術情報をUSBメモリにコピーして盗み出し、UMCが中国本土で始めようとしているDRAM製造のために転用しようとしていたという。中国福建省で地元Fujian Jin Hua Integrated Circuit(福建省晉華集成電路)が建設を進めている300mm DRAM量産工場(2018年後半稼働予定)に、UMCが中国子会社を通して技術供与することになっていた。

起訴状では、MicronからDRAM技術を持ち出した2名とそれをもらい受けたUMC側の1名は台湾の営業秘密法と著作権法に違反したとされており、Micronはそれに対し、「訴訟を通じて我々の知的財産を保護することを目指す。台湾政府が法律を執行することで、台湾に投資することに関心のある外国人投資家は、その財産と利益が完全に保護されると確信している」との談話を発表している。

中国では2018年後半から2019年にかけて半導体メモリを中心に多数の300mm半導体工場が一斉稼働する見通しだが、問題は、諸外国の半導体メーカーからの製造技術導入のめどが十分に立っていない点にある。その対応策として、海外の技術者をヘッドハンティングして技術導入を図ろうという動きを過熱させているが、中でも台湾の技術者は、中国にとっては他国の技術者に比べて言語や文化の衝撃が低いため、特に狙われやすいという。福建省晉華集成電路がDRAM量産工場を建設するにあたって、UMCがDRAMの製造技術を供与することになっていたが、UMCはファウンドリであり、メモリ容量の小さいembeded DRAMを製造した経験はあるにせよ、商用DRAMは製造しておらず、技術供与に無理があるのではないかと業界からは疑問の声がでてきたことは事実だ。現在、台湾の半導体業界から多数のエンジニアやマネージャー、副社長級の多くの人材が中国企業への転職をしているが、そうした動きを踏まえ、台湾政府は、自国の半導体産業を守るため、中国への不正な技術流出を厳しく取り締まろうとしている。