情報通信研究機構(NICT)は9月8日、9月6日20時53分(日本時間)に発生した通常の1000倍以上におよぶX9.3クラスの太陽フレア現象に関して、宇宙天気の現況に関する説明を実施。太陽から発せられたコロナガスは予想よりも早い8日の午前中に地球に到達したとするほか、黒点の活動から、今後も大規模なコロナガスが発生する可能性があり、2~3日は注意する必要があるとした。

今回の太陽フレア現象について説明を行ったNICT電磁波研究所 宇宙環境研究室の石井守 室長

コロナガスの地球到達時間は、当初予測では8日の15時~24時ころとしていたが、想定よりも早い速度で宇宙空間を進んだ結果、同日7時に到達したことを確認。その後、9時~12時にかけて磁気嵐および電離圏嵐の活動のピークを確認したという。

会見したNICT電磁波研究所 宇宙環境研究室の石井守 室長は、「まだデータとしては高めの状態であるが、ピークに比べて下がり傾向となっており、落ち着きを見せつつある」と説明。ただし、このまま収束するかどうかの見通しは不透明で、明日1日程度は、地磁気の擾乱については警戒が必要とした。

DSCOVR探査機による太陽風観測日本時間で7時ころに大きく動きを見せていることが分かる (C)NASA/NOA

また、今回のコロナガスを発生させた黒点はまだ地球方向を向いており、「黒点の向きが地球側ではなくなるのに2~3日は必要だが、その間に、新たな大規模太陽フレア現象が確認される可能性もあり、注視しておく必要がある」とも付け加えた。

「ひので」による2017年9月7日6時31分(世界標準時)の太陽観察画像。右下の白い部分が今回のフレア発生地点付近となる (C)国立天文台/JAXA/MSU

今回のX9.3クラスという値は、静止軌道上で観測を行っている静止気象衛星「GOES(Geostationary Operational Environmental Satellite)」が観測を開始した1975年以降で27番目に位置付けられる規模とのこと。ただし、クラスが大きければ、イコール地球への影響も大きい、というわけではなく、過去にはXクラスの下の下のクラスとなるCクラスの太陽フレア現象であっても、地球に影響を及ぼしたことがあるという。

また、今回の太陽フレア現象は、11年周期とされる太陽活動サイクルにおいて現在、2013年にピークを迎えて下降期に入っている中で発生したもので、石井氏も、「非常に特異な現象で、太陽研究者の中でも科学的に注目すべきイベントとなっている」と説明。今後の研究による解明などに期待したいとした。

なお、想定よりも早く地球に到達したことについて石井氏は、「太陽フレア現象で発生するコロナガスの速さを見積もる方法は現在、観測画像から判別するしかない。そのためどうしても誤差が生じてしまう」としており、技術的な問題が起因しているとする。また、X9.3クラスの太陽フレア現象の直前となる17時50分(日本時間)にもX2.2クラスのものが発生しているが、そちらよりもX9.3クラスのコロナガスの方が速かったことから、X2.2のコロナガスを飲み込む形で地球に到達したことが推測される、としていた。

地球側から見た実際の太陽フレア発生時の太陽の様子。右の画像は、白い丸が太陽で、右下を中心に広がる白いもや状のものがコロナガス