日本IBMは9月7日、都内で記者会見を開き、複数の企業や団体でブロックチェーンネットワークを迅速に構築できるよう、Linux Foundationが提唱するブロックチェーンのフレームワーク「Hyperledger Fabric 1.0」を基盤に採用するIBM Cloudのフルマネージドサービス「IBM Blockchain Platform」の国内における提供を10月から開始すると発表した。

新サービスは、IBM Blockchainのβ版に実装された「分散台帳」「スマート・コントラクト」「合意形成」「暗号技術」の機能に加え、ブロックチェーンを活用するアイデアを形にできるアプリケーション開発環境「Hyperledger Composer」、コンソーシアム型のブロックチェーンネットワークの形成と運営を支援するツール群、IBM Cloud経由で本番利用に求められるシステム性能と高度なセキュリティをPaaSとして提供する。

日本IBM 執行役員 インダストリー・ソリューション事業開発担当の鶴田規久氏は「現在、全世界で約400のブロックチェーンのプロジェクトが走っている。2017年は実証段階から本番の稼働環境を迎え、全体の10%のプロジェクトは日本国内で行われており、本番稼働のプロジェクトも存在する。これまでの金融、貿易などに加え、最近は流通、コミュニケーションなどの分野においても展開されているため、クロスインダスリーとして、さまざまな産業にまたがるブロックチェーンネットワークを展開していく」と、意気込みを語った。

日本IBM 執行役員 インダストリー・ソリューション事業開発担当の鶴田規久氏

日本における事業展開エリア

鶴田氏は日本の事業展開について「世界貿易と地方創生、公共サービスの3つのエリアで展開していく。これらの分野においてはグローバルで実装の事例があり、そこでの知見や開発したアセットなどを国内に持ち込み、効率良く開発していく環境を構築する。リスクやコスト、リードタイムという観点においても、アセットを持ち込むことで短期間かつ効率的、低コストで横展開が可能だと考えている」と話した。

世界貿易での活用では、先行プロジェクトで培ったアセットやノウハウを活用し、世界標準のアプリケーションを提供するほか、同社が推進する海外の世界貿易ネットワークと連携し、グローバルスタンダードに準拠した大規模ビジネス・ネットワークを形成することで、ビジネス創出とコスト削減機会を提供していく。

世界貿易における活用

地方創生における活用については、大手金融機関だけでなく、地方銀行などと法人顧客向けサービス基盤を構築。地方公共団体の収納業務の効率化や公共料金の収納も含め、地域全体でのサービスに参加し、新たなコスト削減・サービス向上、ビジネス創造機会を発掘し、地域活性化を目指すという。

地方創生における活用

公共サービスの活用に関しては「未来投資戦略2017」(閣議決定)で示された革新的電子行政の実現に向けたコアテクノロジーとして位置づけ、セキュリティを確保し、公共サービスとしての親和性が高い、新サービスを法人登記や不動産登記など省庁・業界横断的な業務の効率化への応用を図る考えだ。

公共サービスにおける活用

今後の展開について、鶴田氏は「今年後半~2018年秋までに本格的に展開していく。2019年にインダストリープラットフォームやITのブロックチェーン関連の市場は300億円と見込んでおり、2020年には倍増の600億円を予測している。われわれはインダストリープラットフォームを展開していくことで、2020年に25%のシェア獲得を目指す」と述べた。

全体のスケジュール

ブロックチェーンの本格展開を見据えた製品

日本IBM 執行役員 サーバー・システム事業部長の朝海孝氏は「今、各社が実証実験を行い、応用・適用分野の絞り込みのフェーズにある。どのようなバリューチェーン、ビジネスモデルを構築していくのか、その際にブロックチェーンの有識者を巻き込んで、通用するか否かの局面とも言える。しかし、実証実験の段階ではセキュリティや信頼性、拡張性の担保を想定していないが、本番環境においては必要となってくる」と指摘。

日本IBM 執行役員 サーバー・システム事業部長の朝海孝氏

同氏は、インダストリープラットフォームの本格展開に必要なブロックチェーン技術の要件について「1つ目は、さまざまなユースケースへの対応、2つ目はエンタープライズ向けセキュリティ、合意形成モデルの強化となる。Hyperledger Fabricは複数の選択肢の中で、これらの要件を満たし、ビジネス用途の展開において最適だ」と説明した。

本格展開に必要なブロックチェーン技術の要件

そして、ブロックチェーンネットワークを構築する際に気をつけるべきポイントとして「開発、ガバナンス、運用の3つが挙げられる。開発は各社のスピードを同一にする必要があり、ガバナンスは仮に1社を追加する場合に合意形成といった変更管理などをシステム的に担保しなければならない。また、運用については改ざんやデータ漏洩を徹底的に回避しなければならない。これら3つを解決するのがIBM Blockchain Platformとなる」と、同氏は強調した。

ブロックチェーンネットワーク構築時の3つのポイント

顧客の要望に応じた3プランを用意

「IBM Blockchain Platform」の提供プランは、顧客の要望に応じてコンピュートインスタンスなどを選択できる実証実験向けのEntry、本番業務向けのEnterprise、セキュリティや性能要件が厳格な業界向けのEnterprise Plusの3種類となっている。

価格はEntryが52.5円~/時、Enterpriseが13万8600円、Enterprise Plusは未定となっておりり、EntryとEnterprise Plusは年内のリリースを予定している。

3つのプランの概要(1)

3つのプランの概要(2)