ベルギーimecは9月6日(欧州時間)、シンガポールで開催された「imec Technology Forum Southeast Asia」において、将来の5Gでの応用に向けた低消費電力の2種類のビルディングブロックの開発成果を発表した。

1つは、6GHz未満の周波数帯(4G/5G)で動作する携帯電話などの家電製品向けに設計された、高速かつ小型の逐次比較型A/Dコンバータ(SAR ADC)で、もう1つは、5G固定無線LANアクセスと小型セルバックホールへの応用をターゲットにした無線周波数(RF)位相シフトとオンチップ送受信スイッチを備えた60GHzフロントエンドである。

16nmプロセスを採用したADCチップ

60GHzフェーズドアレイTRX(トランシーバ)フロントエンドチップ

5Gモバイルネットワークは、現在の4Gよりも高いデータ転送速度、低レイテンシ、低消費電力による大規模な接続の実現に向け、6GHz未満の周波数の活用ならびに57-66GHzといった免許不要帯域のミリ波を使って低レイテンシでマルチGbpsの速度実現に向けた検討がなされてきた。

imecのプログラムディレクターであるWim Van Thillo氏は「imecは、6GHz帯およびそれ未満の周波数帯域で動作する5G用の新しいIPビルディングブロックを開発している。我々のポートフォリオには、アナログ-デジタルコンバータ(ADC)、再設定可能な低ノイズ周波数シンセサイザ、ミリ波のフェーズドアレイトランシーバ、アンテナモジュールなどが含まれている。これらのビルディングブロックは、最先端の性能を示し、低消費電力動作に優れ、微細化CMOSテクノロジを活用することで低コスト化を図っている。これらは、今後、研究パートナーが5Gワイヤレス通信のための次世代SoCを実現する際に、大いに役立つだろう」と述べている。

今回開発されたADCは、16nm CMOSプロセスで製造され、コアエリアは350μm×325μmと非常に小型なものとなっている。また、性能としては300MSpsで3.6mWの操作時電力と、204MSpssで70.2dBの低周波信号対雑音比(SNDR)を実現している。

一方のフロントエンド・トランシーバチップは、多数のアンテナをサポートするために、RF周波数で8通りのキャリブレーション不要のビームフォーミング機能を備えてため、固定ワイヤレスアクセスおよび小セルバックホールに適しているとimecでは説明している。また、オンチップの送信-受信スイッチングは、送信および受信モードの間でアンテナアレイをシェアすることを可能にしている。面積は9.6mm2で、28nm CMOSプロセスを採用することで、0.9Vの電源電圧、受信モードおよび送信モードの消費電力もそれぞれ231mWと508mWと低い値に収めることに成功している。

なお、今回開発されたビルディングブロック・チップセットだが、すでにimecの研究協業プログラム加入企業に提供可能な状態にあるほか、パートナー以外の企業にもIPライセンスとして提供が可能な状況だという。