東京大学(東大)は9月7日、通常の超新星より極度に明るい超高輝度超新星「Gaia16apd」の輝くメカニズムを主要な各モデルについてシミュレーションを行った結果、この超高輝度超新星が紫外線波長で特に明るく輝くという特徴は、超新星周囲の物質との激しい衝突によって最もよく再現できることが示されたと発表した。

同成果は、東京大学国際高等研究所カブリ数物連携宇宙研究機構(Kavli IPMU)のAlexey Tolstov 特任研究員や野本憲一 上級科学研究員、ハルキウ物理・工学研究所のAndrey Zhiglo 研究員らの研究グループによるもの。詳細は米国の学術誌「Astrophysical Journal」に掲載された。

超高輝度超新星 Gaia16apd の紫外線と可視光の光度曲線と今回の論文で示した衝突モデルから計算した光度曲線 (c)Kavli IPMU/Tolstov et al.

超新星の中には、超高輝度超新星と呼ばれる、通常の超新星の10倍から100倍明るく輝く星が存在する。しかし、なぜ明るく輝くのかというメカニズムを説明する従来の3つのモデル(重元素ニッケルの放射性同位体である56Niを大量に含む「電子対生成不安定モデル」、超高速回転をし極度に磁化した中性子星であるマグネターが強い電磁波を放射する「マグネターモデル」、超新星爆発時の噴出物が、超新星爆発直前に放出していた大量のガスと激しく衝突する「衝突モデル」)のいずれに適合するのかは明らかになっていなかった。

今回の研究では、超高輝度超新星の爆発について研究するなかで、最近発見された超高輝度超新星で、16億光年離れた暗い矮小銀河に存在する「Gaia16apd」に注目。多波長放射流体力学計算用コードを用いて各モデルについてシミュレーションを行い、紫外線、可視光、赤外線の各波長の光度曲線、光球半径と爆発の速度が観測をよく再現できるかどうかを調べた。

その結果、「Gaia16apd」が 「衝突モデル」の超新星である可能性が最も高いことを発見し、この数値技法を使って異なる3つの各モデルの紫外線放射を計算する方法を発展させた。この技法は、観測された超高輝度超新星がどのモデルに即しているのかを特定する研究に今後役立つと想定されるという。

超高輝度超新星の爆発過程の想像図。左から、「衝突モデル」、「マグネターモデル」、「電子対生成不安定モデル」(c)Kavli IPMU

なお、今回の成果について同研究グループでは、この研究成果は超高輝度超新星の物理をより明確に理解する新たな一歩となることに加え、爆発のシナリオを特定する鍵になる。観測と「Gaia16apd」に似た特異な天体のより詳細なモデル作成は、超高輝度超新星現象の性質を理解するために一層必要となっているとコメントしている。また、今後、他の超高輝度超新星でもシミュレーションを試し、非対称な爆発の詳細やマグネターに関する物理も考慮に入れた、より現実に近いシミュレーションを行っていくという。