市場動向調査会社である仏Yole Developpementは8月29日(仏時間)、「MEMS & Sensors for Automotive(車載MEMSおよびセンサ)」と題するレポートを発行し、その中において、世界の自動車市場は2.3兆ドルを超す規模にまで成長し、すでに成熟産業となっているため、自動車の販売台数は2022年まで年平均成長率(CAGR)で3%増程度の伸びしかないが、今後5年間における車載センサの販売個数のCAGRは8%を上回り、その売上規模はCAGR13.7%と高い伸びを示し、2022年には230億ドルに達するだろうとの予測を発表した。

図1 世界の車載センサ市場規模およびそれぞれの車載センサの市場規模の2016年(左)と2020年(右)の比較。3大市場はレーダー、センサ(黄緑色)、イメージセンサ(肌色)、超音波センサ(灰色) (出所:Yole Developpement)

自動運転/EVブームで車載センサに市場拡大のチャンス到来

現在の車載センシング市場には、圧力、TPMS(タイヤ空気圧監視システム)、化学、慣性、磁気、超音波、画像、レーダー、ライダー(LiDAR)などのMEMSおよび古典的なアクティブセンサなどが出回っている。しかし、自動車市場は、この2年の間に多くの変化が起きており、自動車メーカーは現在、特に自動運転車および電気自動車(EV)の開発技術に投資を集中している。運転の自動化は、カメラ、レーザー、LiDERなどのイメージングおよび検出センサの開発を促進し、EV化はバッテリー管理のための電流センサと熱センサの開発を促進する。中でも、イメージング、レーザーおよびLiDERのような高付加価値のセンサモジュールの統合化に向けたが急拡大している。

2016年の車載MEMSおよびセンサの売上高ランキング・トップ20を見ると、トップは独Bosch、2位は米ON Semiconductor、3位は独Infineon Technologies、4位はNXP Semiconductorsと欧州勢が強みを発揮している。日本勢は、5位にデンソー、7位にパナソニック、10位にTDKグループ、15位に東芝、17位にソニー、19位に日本特殊陶業が入っている。Yoleによると、いままで、このランキングに大きな変動はなかったが、今後の自動運転車やEVの開発進展により、売り上げを伸ばすセンサと伸びないセンサに分けられることとなり、車載センサのランキングが変動する可能性があるとしている。

図2 2016年の車載MEMSおよびセンサ売上高ランキング・トップ20(単位:百万ドル)。赤色:圧力センサ、黄色 化学センサ、黒色:磁気センサ、青色:イメージセンサ、橙色:レーダー、緑色:慣性センサ (出所:Yole Developpement)

EVの普及で磁気センサが増加

圧力センサ、化学センサ、磁気センサなどの古典的なセンサは、EV時代の到来で、その出荷数量やシェアなどを大きく変化させる可能性があるとYoleでは指摘している。Yoleの予測では、EVが増えると、圧力センサの数が減り、バッテリの監視や可動部品のさまざまな位置決めと検出のために磁気センサが増加することになるという。 また、自動運転車の実現に向けて、イメージング、レーザーおよびLiDERのような高付加価値のセンサモジュールの統合化が進んでおり、車載センサ市場の有り様を変えようとしているという。例えば、イメージセンサは当初ADAS(先進運転支援システム)向けにハイエンド車に搭載されたが、現在では、ビジョンベースの衝突被害軽減ブレーキ(AEB)などの普及で一気に出荷台数がのびている。中でも、駐車支援アプリケーションを実現する360°サラウンドビューカメラの需要が急増しており、イメージセンササプライヤのOmnivisionや自動車用カメラの主要メーカーとなっているPanasonic、Valeoといった企業の後押しとなっている。

また、イメージセンサやLiDERの競合相手と誤って見なされることが多いレーダーだが、ハイエンド車では複数技術の1つとして採用されることが増えているほか、アダプティブ・クルーズコントロール(定速走行・車間距離制御装置)などのためにミドルレンジ車にも普及が進んでおり、自動運転のレベル2および3の機能として採用が推進されている。

そしてLiDARだが、周辺環境の3D感知を可能にしてくれるので、自動車業界を変革するさまざまな潜在的な用途があるとされているが、コスト面や技術面を含め、多くの自動車メーカーによっては高い壁となっている。ただし、Yoleでは、高い成長が期待できる市場と見ており、その市場規模は2017年の3億ドル程度から、2022年には44億ドルまで拡大する見込みであるとしている。

図3 LiDARの市場規模および価格の変遷予測。2017年の市場規模は3億ドルだが、2022年には44億ドルと約15倍拡大するほか、価格も2017年では5000ドルだが、2022年には500ドルまで低下することが予測されている (出所:Yole Developpement)