大阪大学(阪大)は、香味発酵と共同で、産業上有用な匂いを嗅覚受容体で数値化してデータベースを構築し、新しい匂いをデザインする事業展開が開始されたことを発表した。

匂いの定量化の表現方法- 嗅覚受容体の種類と反応強度を用いた数値化・データベース化(出所:ニュースリリース)

同大産業科学研究所の黒田俊一教授らの研究グループは、独自開発した全自動1細胞解析単離装置を駆使することで、特定の匂い分子に反応して活性化する嗅覚受容体群を網羅的に単離する唯一の方法を2016年に開発した。今回サービス展開を行う香味醗酵は、黒田教授が開発した嗅覚受容体解析技術の社会実装を担う大阪大学発ベンチャーとして、平成29年5月に設立された。

現在、(1)任意の匂い(混合物でも可)による嗅覚受容体群(ヒト約400種類、マウス約1000種類)の活性化度合いを迅速測定する方法、(2)任意の匂いを嗅覚受容体群活性化度合いで表現する方法、(3)求める匂いを他の匂い分子群で迅速に再構成する方法——の3つの技術を特許申請しているという。

研究グループが開発した嗅覚受容体を発現する細胞群から、任意の匂い(混合物を含む)に反応する細胞のみを全て迅速に取り出す方法を駆使して、ニーズに即した匂いのデータベース構築を進めている。この蓄積したデータを活用することにより「匂いの感じ方」に基づく匂いの要素分解及び再構成を行うということだ。

解析情報の活用- ヒト嗅覚受容体による匂いDBに基づいたた匂いの再構成(出所:ニュースリリース)

これにより、高価な香りを安価な成分で調香師の経験に依らず迅速に代替すること、限りなく本物に近い擬似的な飲料を官能試験によらず迅速に開発すること、加齢臭等の嫌な匂いを積極的に感じなくする物質を迅速に見つけること、さらには微量に存在するだけで匂いを強めたり弱めたりする成分の解析と原理の理解や、精神活動を制御する匂いの解析と原理の理解、生殖活動を高める匂いの解析と原理の理解といった、これまで不可能だったことが可能になるということだ。