日立製作所と日立オートモティブシステムズは8月30日、自動運転用アプリケーションの開発過程で発生したアプリケーションの不具合を短時間に再現する技術を開発したと発表した。同技術により、従来手法と比較して開発過程で生じたアプリケーションの不具合の再現に要する時間を約40%に短縮することが可能だという。

現在、前方障害物をカメラやレーダーなどのセンサで検知し、自動でブレーキをかけるといった自動運転技術が実用化されており、車両の走行を制御するアプリケーションを自動運転ECU(Electronic Control Unit:電子制御ユニット)とで実行している。今後のさらなる高度化に向けて、前方だけでなく車両周辺を360度センシングして、車線変更や追い越しなど、さまざまな走行を自動で制御するアプリケーションの開発が進んでいる。

自動運転ECUの役割

今回、開発した技術は、あるアプリケーションの不具合事例において、センサ情報のみを記録・再現する従来手法に比べ、開発過程で生じたアプリケーションの不具合全体の再現に要する時間を約短縮できることを確認。同技術により、不具合の原因究明を効率的に進めることが可能になり、自動運転用アプリケーションの高品質化とテスト工数の削減に寄与するという。

アプリケーションの開発過程で不具合が見つかった際、従来は車内ネットワーク上に流れるセンサ情報が記録された外部記録装置の中から、該当するセンサ情報を記録されたタイミングで自動運転ECUに入力することにより、不具合を再現し、原因を究明していたという。

数10ミリ秒周期で実行されるアプリケーションの不具合を確実に再現するためには、実行タイミングまでにアプリケーションに入力されるセンサ情報を再現する必要がある。従来方式ではセンサ情報の入力タイミングを自動運転ECU外部で再現するため、自動運転ECU内部のアプリケーションの実行タイミングに同期させてセンサ情報を入力することができないという。

自動運転の高度化に伴いセンサ情報が膨大化していく将来、アプリケーションに入力された大量のセンサ情報を不具合発生時と同一タイミングで再現することは難しくなり、不具合の再現が困難なケースが増加し、テスト工数の急増が懸念されていると指摘している。

そこで、両社は自動運転車向けのアプリケーション開発を効率化するリアルタイムデータベースを活用することで、アプリケーション実行タイミングとセンサ情報入力タイミングを高精度に記録して再現する技術を開発。従来方式では記録時と再現時で最大数10ミリ秒のタイミング誤差が発生していたが、新技術を用いることで約10マイクロ秒に抑えることが可能だという。

センサ情報の記録・再現方式の比較

日立オートモティブシステムズは、同技術を搭載した自動運転ECUソフトウェア開発キットを11月から提供を予定している。今後、両社はシミュレーション技術を利用したテスト環境の構築など、自動運転用アプリケーションの開発過程における効率化技術の提供により、安全な自動運転社会の実現に貢献していく考えだ。