米Googleは8月29日 (現地時間)、Android端末で拡張現実 (AR: Augmented Reality)体験を実現するフレームワーク「ARCore」を発表、ソフトウエア開発キットの初期プレビュー版をリリースした。同社のARプラットフォーム「Tango」の技術を基盤にしているが、TangoのようにTango用のハードウエアは必要なく、ARCoreで構築されたARアプリは性能要件を満たす一般的なAndroidデバイスで使用できる。プレビュー終了時点で、1億台のAndroidデバイスを対象にすることを目標にしている。

ARCoreはモバイルデバイスのポジションをトラッキングし、周囲の環境を認識する。

  • モーショントラッキング:デバイスのカメラで捉えた室内のフィーチャーポイントと、IMU (慣性計測ユニット)センサーからのデータを合わせて、デバイスの位置と方向を判断する。
  • 環境認識:モーショントラッキングでも使用されるフィーチャーポイントから平面を判断し、床の上やテーブルの上などに仮想オブジェクトを自然に配置する。
  • 環境光:周囲の光や明るさを把握し、仮想オブジェクトの光が開発者の意図通りの明るさで、環境にとけ込む自然でリアルな光になるように調整。

ARCoreアプリの開発には、Android Studio、Web (AR on the Web)、Unity、Unrealなどの利用が可能。プレビュー版がサポートするデバイスは、Android 7.0 Nougat以上で動作する「Google Pixel」「同Pixel XL」、「Samsung Galaxy S8」 (SM-G950U、SM-G950N、SM-G950FD、SM-G950FD、SM-G950W、SM-G950U1)。

Googleは、Tangoのほか、3Dオブジェクト作成ツール「Blocks」や空間ペイントツール「Tilt Brush」といったAR/VR向けのコンテンツ作成ツールを提供するなど、コンピューティングのこれからの可能性としてARに注力してきた。ARプラットフォームは、Appleが「iOS 11」(今秋に正式版リリース)でAR向けフレームワーク「ARKit」を投入する。TangoやMicrosoftのHoloLensに比べるとAR体験の制約はあるが、すでにたくさんのユーザーが存在する数億台規模のiOSデバイスで利用できるのが開発者にとって大きな魅力になっている。ARCoreは、AppleのARKitに対抗する「全てのモバイルユーザーにAR」を目指したフレームワークである。Googleは、Samsung、Huawei、LG、ASUSといったパートナーとも協力しながら「ARCore対応デバイス1億台」の実現に挑む。