東工大、火星衛星の巨大衝突起源説により火星マントル物質の存在を理論予想

東京工業大学は、同大地球生命研究所(ELSI)の兵頭龍樹氏、玄田英典特任准教授らの国際共同研究チームが、火星の衛星である「フォボス」と「ディモス」が月の起源と同じように、巨大天体衝突(ジャイアントインパクト)で形成されうることを明らかにするとともに、同衛星に火星マントル物質が存在することを理論予想したことを発表した。この研究成果は、8月18日発行の米国科学誌「Astrophysical Journal電子版」に掲載された。

火星衛星フォボス(左)とディモス(右)の画像(出所:ニュースリリース※PDF)

火星衛星フォボスとディモスは、火星の赤道面を円軌道で回っている。半径10km程度のフォボスとディモスは、火星質量の約1000万分の1と非常に小さい。火星衛星のいびつな形状や表面スペクトルの起源は、長らく小惑星が火星の重力に捕獲されたものと考えられていた(捕獲説)が、現在の衛星の軌道(赤道面を円軌道で公転)を説明することは極めて困難である。一方で、火星の北半球には太陽系最大のクレータ(ボレアレス平原)が存在し、巨大天体の衝突で形成された可能性が高いことがわかっている。

そして、近年、このクレータを形成しうる巨大衝突過程(火星の直径の3分の1程度の巨大天体が火星に秒速6km程度で衝突)をコンピューターシミュレーションによって調べることで、飛び散った破片が集まって最終的にふたつの衛星を形成しうることが明らかになった。

研究グループは、フォボスとディモスを形成する巨大衝突の超高解像度3次元流体数値シミュレーションを行った結果、典型的な破片粒子サイズは、0.1μmと100μmから数m程度になることがわかった。また、0.1μm程度の微粒子が、観測されている火星衛星の滑らかな表面反射スペクトルの特徴と矛盾しなかった。

さらに、火星衛星の構成物質の約半分は火星に、残りの半分は衝突天体に由来していることが判明したほか、この火星物質は火星地表面から50~150kmの深さから掘削された火星マントル由来の物質であることが明らかになった。

(左)近接遭遇した天体を重力によって捉える捕獲説 / (右)巨大衝突によって形成された 破片から衛星が集積する巨大天体衝突説(出所:ニュースリリース※PDF)

今回の研究により、火星衛星が巨大天体衝突によって形成可能であり、観測される表面反射スペクトルの特徴も説明できることが明らかになった。また、火星衛星には火星由来の物質が多く含まれ、衝突当時の火星マントル物質も含まれていることが期待される。

これらのことから、宇宙航空研究開発機構(JAXA)が2024年に打ち上げを予定している火星衛星サンプルリターン計画(MMX)によって、衛星から火星本体の物質を地球に持ち帰る可能性がある。これは、将来の火星移住計画の推進に大いに役立ち、さらに、未だ謎につつまれる太陽系形成史を紐解く物質科学的な鍵となることが期待されると説明している。

火星への巨大天体衝突のイメージ(出所:ニュースリリース※PDF)

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