世界半導体業界の非営利組織(NPO)「世界半導体市場統計(World Semiconductor Trade Statistics:WSTS)は8月18日(米国時間)、6月に発表していた2017年の半導体市場規模を前年比11.5%増とする予測を、第2四半期の市況を分析しなおした結果、予想を超えて好況に推移し、年後半も成長が継続するとの判断から、成長率を17%増に引き上げたことを明らかにした。

WSTSは、春と秋の年2回、半導体市場の予測を公表しているが、こうした年2回の公式発表以外で修正を発表するのは、異例のことである。この上方修正により、WSTSの見通しでは、2017年の半導体市場は前年比11.5%の3780億ドルから、同17%増の3970億ドルへと引き上げられた。これは、2017年は、ほかの民間市場調査会社も年初予測の1桁成長から、すでに複数回の上方修正を行っており、2017年8月の時点でIC Insightsが同16%増、Gartnerが同17%増の予測としており、WSTSの上方修正も、ほぼこれら民間調査会社の予測とも一致したものとなる。

また、2016年の成長率を実績値として同1.1%と発表したほか、2018年の見通しについても上方修正を実施。6月の予測である同2.7%増の3880億ドルから、同4.3%増の4140億ドルとし、2018年には、半導体史上初めて4000億ドルを突破することになるとの予測となった。ちなみに、先述の2社の民間調査会社は、先の上方修正に伴い、2017年中に市場規模が4000億ドルを突破するとの見方を示している。

なぜ、WSTSの市場予測する市場規模は、民間調査会社の数値より小さいのか、という点だが、WSTSは、世界中の主要半導体企業によって設立された非営利組織で、各社の売上高データを半期に一度持ち寄って今後の市場に対する予測を行ってきた。かつては、60社以上が参画し、これらの企業の売上高総額が世界市場の75%程度を占めていた時期もあったが、その後、脱退やM&Aが相次ぎ、現在の会員数は、48社(米国17社、日本11社、 欧州11社、日本除くアジア・パシフィック9社)となっており、持ち寄ったデータだけでは世界市場全体の予測は困難であり、加入していない企業の販売額については、企業の決算情報や市場調査会社の調査結果などを参考にして予測せざるを得ないのが実情である。日本は、律義にほとんどの主要半導体企業が参画しているが、米国では、後述するようにIntelもAMDもすでに脱退しており,17社というのは極めて少ないといえる。

WSTSがデータを集計するにあたって、2011年にAMDが、2012年にIntelがそれぞれ脱退した影響は大きい。2社による寡占状態にあるマイクロプロセッサ業界では、WSTSのデータを見ればライバル企業のデータが手に取るようにわかってしまうために、この2社はWSTSに加入しているメリットよるデメリットのほうが大きいと判断したようだ。一方の民間調査会社は、はるかに多くの半導体企業に定期的にインタビューやアンケートを実施したり、データ収集などを行うことで情報収集をはかっており、業界のカバレージが広いと思われ、その差が市場予測の金額の差となって出ていると考えられる。