ワン・トゥー・テン・ホールディングスはパラスポーツを自分ごと化させる「CYBER SPORTS」プロジェクトの第2弾として、「CYBER BOCCIA(サイバー ボッチャ)」を開発。8月23日に開催された発表会で、その完成形が披露された。

ボッチャとは、重度脳性麻痺者もしくは同程度の四肢重度機能障がい者のために考案されたスポーツで、パラリンピックの正式種目の1つ。赤と青に分かれた2チームがそれぞれの色のボールを6球ずつ投げ、10m(選手のスローイングボックスを含めると12.5m)×6mのコートにあるジャックボールと呼ばれる白いボールに対して、いかに近づけられるかを競う。

今回同社が開発したサイバー ボッチャは、ボッチャのルールをそのままに、デジタル技術を駆使することで、障害の有無を問わずカジュアルに楽しめるように拡張させたプロダクト。光と音楽に包まれたサイバー感あふれる外観は、ゲームセンターなどに設置されていてもアトラクションの1つとして溶け込みそうだ。

CYBER BOCCIA

ワン・トゥー・テン・ホールディングス 代表取締役社長 CEOの澤邊芳明氏は同プロダクトについて「バーやエンターテインメント施設に導入できるような、"ド派手でクールでかっこいい"誰もが楽しめるスポーツを目指しています」と、コンセプトを語る。

澤邊芳明氏

「ボッチャをはじめとしてパラスポーツのメディア露出が増加し、人々の認知・理解は進んでいます。しかし、多くの人がファンとして大会に足を運ぶところまでは至っておりません。リオのパラリンピックではチケットが半分近くも売れ残ったといいます。では、2020年の東京ではどうなるでしょうか。不安でなりません。そこで、現状を打破するためには、純粋にパラスポーツがおもしろいと思ってもらえる状況を作り出さなければいけないと考えました」と、澤邊氏はサイバー ボッチャの開発にかける想いを述べた。

サイバー ボッチャの特徴として、パラスポーツのボッチャを「ビジュアライズ」「センシング」「サウンド」において拡張した点が挙げられる。

ビジュアライズについて、同プロダクトではジャックボールの位置や赤・青それぞれのボールの位置、ゲームの状況などに応じたグラフィックがコート上に映し出される。また、投げる順番は交互ではなくジャックボールと投げたボールの距離によって決まるが、次に投球するプレイヤーもグラフィックで表示されるためわかりやすい。

目標球となるジャックボールの位置に合わせてグラフィックが表示されている様子

投げたボールの色と位置に合わせてグラフィックが変化

次にボールを投げるチームの指示もグラフィックでわかる

引地耕太氏

今回のプロダクトでクリエイティブを担当したワン・トゥー・テン・ホールディングス CD・AD/1-10 LABメンバーの引地耕太氏は、「ボールの色や位置などのデータ、プレイヤーの戦略を、美しくエモーショナルにコートの上に描きたいと考えました。福祉的なパラスポーツのイメージを払拭して、カジュアルに楽しめるエンターテインメントスポーツとして普及できればと思います」と、グラフィック面で目指した方向性を述べた。

森岡東洋志氏

また、技術的な面について、テクニカル担当のワン・トゥー・テン・ドライブ CTO/1-10 LABメンバーの森岡東洋志氏は、「ボールの位置やゲームの状況に応じてリアルタイムに変化するグラフィックシステムを開発しました。デザインを考慮しつつ、バリエーション豊かでかつ美しいグラフィックを描きます」と、紹介した。

また、センシングについては、2つのデプスセンサーが搭載されており、ボールの位置をミリ単位で常に測定するので、通常のボッチャとは異なり、審判不要でプレイすることできる。

投げたボールの位置は数値でも表示される

サウンドについて森岡氏は「メロディ、リズム、SEのすべてがリアルタイムで生成されるシステムを搭載しております」と説明。ボールの動き、色や位置、リードしているチームによって動的に変化するサウンドは、「一投ごとにサウンドが作られ、ゲームが進むにつれて音が重なり、クライマックスに向けて試合を盛り上げる演出をしています」と、引地氏はこだわりを述べた。

ちなみにボールは通常のボッチャと同じものを使用する

サイバー ボッチャのコートは5m×3mという通常の約2分の1サイズ。澤邊氏は「もう少し小さいバージョンも検討しており、導入しやすいようなプロダクトに発展させていきたいと考えている」と、展望を述べた。

なお、同プロダクトの利益の10%、体験料の10%を日本ボッチャ協会に自動的に寄付する仕組みになっている。販売価格は600万円。同社では最低100台を販売目標とし、6億円の売上を目指す。

レンタル価格は160万円+運搬費/1週間、リース価格は初期費用が200万円でリース料が20万円/月×24ヵ月契約。設置状況によっては、別途御見積が必要になる。価格はすべて税別の金額。