京都大学は、松沢哲郎高等研究院副院長、高潔氏、友永雅己教授、北京大学 蘇彦捷教授らの研究グループが、チンパンジーがじゃんけんを学習することを発見したことを発表した。この成果は8月10日、Springerの学術誌「Primates」オンライン版で公開された。

グーとパーのうち、パーを選ぶチンパンジー(出所:ニュースリリース※PDF)

じゃんけんは、「紙」「石」「はさみ」の3者が循環して勝負が決まる、非直線的な循環関係である。研究グループは、7頭のチンパンジーにじゃんけんの規則を訓練した。チンパンジーの手の写真を編集して 「グー」、「チョキ」、「パー」を表した画面に、グーとチョキ、チョキとパー、 パーとグーのいずれかのペアを呈示し、チンパンジーが正しい手を選べば食べ物を与え、チャイムが鳴るようにした。100日ほどの訓練すると、3つのペアがランダムに呈示されるむずかしい課題でも、5頭チンパンジーが完全に正解するようになった。これはチンパンジーが循環関係を学習できることを示している。

また、この結果が特定の画像のみに限られるのかどうかを調べるため、研究グループは自身の手の写真を使って新たにグー、チョキ、パーの画像を作成したところ、新たな画像の最初のセッションでは彼らの成績はでたらめであった。しかし、訓練を通して成績は向上し、最終的にはヒトの手の写真でも完璧な成績となった。

その後、左右の手を用いたり手のひらと手の甲の写真を用いたりして新たな画像を作っても、チンパンジーの反応は同様であった。新たな画像では最初はできなくてもだんだんと成績は向上し、循環関係を学習して完璧に正答するようになった。

グーとパーのうち、パーを選ぶ子ども(出所:ニュースリリース※PDF)

また、研究グループはヒトの子どもにも同様の調査を行った結果、約4歳でじゃんけんのルールを習得できることがわかったという。すなわち、チンパンジーはヒトの4歳の子どもと同じくらい柔軟に循環関係を理解できる認知能力があることが示された。

この研究では、人間同士のコミュニティーでは、非直線的で時に循環したりする優劣関係が存在するが、チンパンジーの社会では厳格な直線的優劣関係を持っている。同研究グループは、そのような優劣関係を持つチンパンジーにも、ヒトでよく見られる非直線的な問題を解決する能力が、実は備わっていることがわかる興味深い発見となったとコメントした。