狭心症や心筋梗塞の治療法を改善、腎臓から心臓を治療する - 東北大学

東北大学は8月22日、冠動脈ステント治療後に治療部分近くに生じる冠攣縮反応に対して、カテーテルで腎動脈交感神経を除去する治療が有効であると発表した。

同成果は、東北大学大学院医学系研究科循環器内科学分野の下川宏明 教授の研究グループによるもの。詳細は米国の学術誌「Arteriosclerosis,Thrombosis, and Vascular Biology(電子版)」に掲載された。

現在、心臓の動脈の硬化が原因となる狭心症や心筋梗塞といった虚血性心疾患に対して、カテーテルによる冠動脈ステント留置治療が標準治療として広く行われている。この治療では治療部位の血管が再び狭くなることを予防するために薬剤溶出性ステントが主に使用されているが、治療後数年経つとステントの両端に冠攣縮が生じることがあり、胸痛や場合によっては突然死に至るという問題点がある。

今回の研究では、ブタの冠動脈に薬剤溶出性ステントを留置した。すると、ヒトと同様に、ステント留置部の両端に冠攣縮が生じ、同部位で交感神経線維の増加が見られた。このことから、冠攣縮に自律神経系の異常が関与している可能性があるとした。その後、全身の自律神経バランスを改善する作用を持つ腎動脈交感神経除神経を行うことで、薬剤溶出性ステント留置後に生じる冠攣縮反応に対する影響の評価を行った。

まず、腎動脈交感神経除神経治療により、腎動脈局所の交感神経が切断されたことを確認。冠動脈ステント治療にともない脳の交感神経が活性化し、全身の自律神経のバランスが変化したことを血圧や筋電図を用いた神経活性評価でも確認した。さらに、ステント留置冠動脈での交感神経線維の増加が抑制され、最終的に冠攣縮反応も抑制されることを証明したとする。

なお、同研究グループでは、今回の成果について、ステント留置後冠攣縮や一般的な冠攣縮の病態解明や新たな治療方法の確立、さらには多臓器連関のさらなる解明が期待されるとコメントしている。