京都大学(京大)は8月18日、ショウジョウバエの脳で時刻の認識に関わる光センサタンパク質が、紫外光を中心に紫色光・青色光も受容できるセンサであることを明らかにしたと発表した。

同成果は、京都大学大学院理学研究科 七田芳則名誉教授(現・立命館大学客員教授)、山下高廣助教、酒井佳寿美研究員、博士課程の筒井圭氏らの研究グループによるもので、8月4日付の英国科学誌「Scientific Reports」に掲載された。

多くの動物は、眼に視覚の光センサタンパク質(オプシン)を持っており、ヒトも暗がりで明暗を認識するオプシン(ロドプシン)と明るい所で色識別を行う3種類のオプシン(赤色光・緑色光・青色光それぞれを受容する)を持つことが知られている。

一方、ショウジョウバエは、緑色光・青色光・紫色光・紫外光それぞれに高い感受性を示す計6つのオプシンを眼に持つことがわかっている。また、ショウジョウバエは「第7のオプシン(Rh7)」を持つことが知られていたが、Rh7は眼では働いておらず、どこで働いているのか、どの波長の光を吸収するのか、どのような生理機能に関わるのか、など不明な点が多く残っていた。

同研究グループは今回、人工的にRh7タンパク質を作製することに成功。Rh7が紫外光をよく受容するオプシンであることを明らかにした。さらに、Rh7は紫外光だけでなく紫色光や青色光まで幅広い範囲の光波長を受容できる一方、それぞれの波長の光に対する感度が低くなっていることが確認された。

紫外光を受容する視覚のオプシンは、ショウジョウバエを含めていくつもの動物で知られているが、それらは紫外光を感度良く受容する性質を持ち、青色光を受容するような性質は持っていない。そのため、眼で紫外光から青色光までの広範囲の光波長を受容するためには、紫外光と青色光それぞれを受容する視覚のオプシンが協同する必要があることから、Rh7はひとつで視覚のオプシン2つの範囲をカバーし、一人二役の働きをするといえる。

また、別の研究で、Rh7は脳内で時刻の認識のために働いていることが明らかにされており、ショウジョウバエは、紫外光を中心に青色光までの広範囲の光波長を脳で受容することにより、時間の確認を行っているものと考えられる。

ショウジョウバエの眼と脳の光センサ。視覚の光センサ(左)と脳内の光センサRh7(右)とを比較すると、Rh7は紫外光を中心に紫色光・青色光も受容できるセンサであることがわかる (出所:京大Webサイト)