科学技術・学術政策研究所が日本を含めた世界主要国の科学技術活動を体系的に分析した「科学技術指標2017」をまとめ、このほど公表した。そのうち論文については「科学研究のベンチマーキング2017」としてより詳細に分析した。公表資料によると、2013~15年の3年間に日本が出した論文数は、10年前の米国に次ぐ世界2位から4位に下がり、中国、ドイツに抜かれた。日本の科学研究力の低下傾向があらためて浮き彫りになったが、一方で特許出願に着目すると現時点ではまだ世界有数の技術力を維持していることがうかがえる。

図1 左から国・地域別論文数、Top10%補正論文数、Top1%補正論文数の上位10カ国(提供・科学技術・学術政策研究所)

図2 主要国政府の科学技術予算の対GDP比率の推移(提供・科学技術・学術政策研究所)

「科学技術指標2017」によると、2013~15年の年平均の論文数の世界一は20年前、10年前と変わらず米国がトップ。日本は64,013件で、03~05年の67,888件から減少している。これに対し13~15年の中国は219,608件。03~05年の51,930件と比べて約4倍も増えた。10年前より論文数が増えて13~15年の数が64,747件になったドイツにも抜かれて日本は世界4位に落ちた。日本の研究者数は2016年時点で66.2万人。中国、米国について3位で、論文数順位は研究者数順位を下回った。

論文の内訳で、被引用回数が上位10%に入る「Top10%補正論文数」(実数になるよう補正を加えた数)と上位1%に入る「Top1%補正論文数」(同)の2013~15年比較で日本はいずれも10年前の4位から9位に大きく順位を下げた。10年前と比べて中国、フランス、イタリア、カナダ、オーストラリアに抜かれていた。いずれの指標でも2位になった中国の躍進が目立っている。全論文数より、引用数が多い論文数で大きく順位を落とした結果は、注目度の高い論文で中国などに大きく差を付けられた実態を示している。

日本の論文については、このほか、論文総シェアの約50%を占める国立大学の論文数が 2000年代半ばから伸び悩でいる実態や、分野別分析の結果、臨床医学が増加する一方で物理学、化学、材料科学が減少していることなどが明らかになった。

主要国の研究開発費の比較では、日本の2015年の研究開発費総額は18.9兆円で、51.2兆円の米国、41.9兆円の中国に次いで3位だった。研究開発費の内訳をみると総額上位国の大半は企業が多く占めている。日本は企業が13.7兆円で大学が3.6兆円。主に基礎研究を担う大学分が少ないことが分かった。

主要国の政府から企業への支援の在り方を見ると、日本は他国と比べて研究開発費支出などの直接的支援比率(国内総生産との比率)が小さく、研究開発税制優遇措置適用などの間接的支援比率(同)が大きい。

科学技術予算の対国内総生産(GDP)比では、日本は0.65%。韓国が1.21%で主要国トップ。ここ10年の急増が目立っている。ついで中国が1.02%。中国は2005年から10年ごろにかけて比率が急増したがその後頭打ちになっている。3位はドイツで0.88%、以下米国の0.80%、日本の順。また、人口100万人当たりの博士号取得者比較で日本は、ドイツ、英国、韓国、米国、フランスに次いで6位だった。

一方、2カ国以上への特許出願数を示す「パテントファミリー」を見ると、日本は2010~12年の年平均は64,273件。世界シェアで29.8%を占めて2000~02年の同46,332件に引き続いて1位を維持した。1990~92年では米国が1位で日本は2位だったが、2000~02年で米国を抜いた。中国は1990~92年、2000~02年の2期間には10位以内に入っていなかったが、2010~12年は同16,144件で5位に入った。論文に関する最新の指標で上位を占めていることから今後特許出願の分野でもさらに順位を上げる可能性がある。

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