東大、長年観測が待望されていた電子の「震え運動」を検証

東京大学(東大)は8月16日、電子が常に光の速さで震動している現象を固体中の電子を使って確認することに成功したと発表した。

同成果は、東京大学大学院理学系研究科 岩崎優氏、東京大学物性研究所 勝本慎吾教授らの研究グループによるもので、8月11日付の英国科学誌「Scientific Reports」に掲載された。

真空中の電子は常に光速で細かく動いており、この電子の「震え現象」は、理論物理学者シュレディンガーが、電子の相対論的方程式の理論的研究において発見した。その振動数は1秒間に2.5×1020と言われており、観測は事実上不可能である。固体中の電子も同様の震え現象を起こし、その振動数は真空に比べて遥かに低いが、それでも測定は困難であると考えられてきた。

同研究グループが今回行った実験では、InAs(インジウムヒ素)を用いて電子を2次元に閉じ込めた。さらに、電気抵抗が量子化する量子ポイントコンタクトと呼ばれる細い隙間を用意し、ここを通る電子のスピン方向を揃えた。この量子ポイントコンタクトを電子が散乱されずに走る平均距離の2倍の距離に向かい合わせに置くことで、散乱体が複数個立っている設定になっている。

「震え運動」の理論によると、2次元面に平行な磁場は、震え運動の振動数を変化させるため、電子が散乱体に当たるときの角度が変化し、小さな震え運動が散乱角度の大きな変化となる。これによって微小な「震え」が増幅され、全体の電気抵抗に大きな揺らぎが現れる。実際に、低温0.1Kに冷却し、電気抵抗を測りながら横向きに磁場を加えていくと、磁場に対してノイズのような揺らぎが現れた。震え運動を仮定した計算機シミュレーションでも、この実験結果を再現できることが示されている。

量子ポイントコンタクトと呼ばれる狭い部分(青色)を通った電子(緑色)は「震え振動」をしながら進む。この電子が散乱体(茶色)に当たり跳ね返って、抵抗の振動として検出される (出所:東大物性研Webサイト)

同研究グループは今回の成果について、長年実験的な検証が待たれていた電子の震動現象が、意外に大きな電気抵抗揺らぎとして現れることを示し、現象の検証と新たな揺らぎの発見とを同時に行うことができたものであると説明している。



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