産総研、リチウムイオン電池の充放電機構を解析する新たな手法を開発

産業技術総合研究所(産総研) 省エネルギー研究部門 エネルギー界面技術グループの朝倉大輔氏、細野英司氏、松田弘文氏らの研究グループは、機能性材料の構造安定性を解析するため、放射光軟X線発光分光を用いて各元素の電子状態を詳細に分析する手法を開発したことを発表した。

この手法により、リチウムイオン電池の正極材料では、充放電動作を経た後の構造安定性と、遷移金属と酸素からなる混成軌道での電荷移動の充放電前後の変化に密接な対応があることを見いだした。この技術の詳細は5月25日、英国王立化学会の物理化学分野の専門誌「Physical Chemistry Chemical Physics」オンライン版にて公開された。

軟X線発光スペクトルと今回得られたマンガン-酸素間の化学結合の情報(出所:産総研Webサイト)

近年、エネルギー貯蔵デバイスの導入が必要とされており、中でもリチウムイオン電池を中心とした二次電池への期待は高く、エネルギー密度に加え、出力特性や充放電サイクル特性、安全性などのさまざまな課題に対して研究開発が行われている。現在のリチウムイオン電池の性能を大きく超える革新的なリチウムイオン電池材料を創成するためには、これまでにない革新的な評価手法により得られた学理に基づくブレイクスルーが不可欠であり、電子状態に基づく材料設計指針の立案への期待は高い。

今回、研究グループは、放射光X線吸収分光による解析に加えて、着目する遷移金属と酸素間の電荷移動効果を直接的に観測できる軟X線発光分光を用いて、リチウムイオン電池の正極材料の原子間の結合の強さを判定する方法を考案した。これにより充放電前後における結合の強さの変化量が充放電繰り返し特性と相関していることを見いだした。

この手法により、リチウムイオン電池の正極材料では、充放電動作を経た後の構造安定性と、遷移金属と酸素からなる混成軌道での電荷移動の充放電前後の変化とに密接な対応があることを見いだした。

充放電繰り返し特性(サイクル特性)(出所:産総研Webサイト)

革新的なリチウムイオン電池材料を創成するためには、これまでにない革新的な評価手法により得られた学理に基づくブレイクスルーが不可欠であり、電子状態に基づく材料設計指針の立案への期待は高い。同技術は、大型放射光施設SPring-8の軟X線ビームラインBL27SUの放射光軟X線発光分光によって得られた発光スペクトルの電荷移動効果に注目した解析手法で、結晶を構成する元素間の結合の強度を電子状態から議論し、電極材料の構造安定性と充放電サイクル特性とを関連づけたものである。

この研究で開発された手法は、電子状態の理解に基づいた高い充放電サイクル特性を示す革新的リチウムイオン電池材料の開発への貢献が期待される。今後は、電池を動作させた状態で、元素ごと、電子軌道ごとの詳細な電子状態を解析するオペランド測定を行い、リチウムイオン電池の正極材料や負極材料の充放電機構の真の理解に努めるとしている。

Mnの発光スペクトル(出所:産総研Webサイト)



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