IT専門調査会社のIDC Japanは、世界のAR/VRハードウェア、ソフトウェアおよび関連サービスの市場予測を発表した。

最新の「Worldwide Semiannual Augmented and Virtual Reality Spending Guide」によると、AR/VR関連サービスの合計支出額は2017年の114億ドルから、2021年には2150億ドル近くに達する見通しで、2016年から2021年にかけての年間平均成長率(CAGR)は113.2%と高い成長が見込まれるという。

高成長が見込まれるAR/VRのユースケース(世界市場、年間平均成長率順で上位抜粋)

また、2017年のAR/VR支出が最も多いのは米国の32億ドル、次いで日本を除くアジア/太平洋地域(APeJ)が30億ドル、西欧20億ドルの順となった。しかし、2018年と2019年にAPeJがトップに立つも、2020年からは支出が加速する米国が再びトップに立つことが予測され、その間に西欧がAPeJを抜き、2021年には2位に浮上することが予想されるという。2016年から2021年にかけてAR/VR支出が最も急成長するのはカナダ(CAGR 145.2%)で、次いで中東欧(同133.5%)、西欧(同121.2%)および米国(同120.5%)とIDCは予測している。

2017年はコンシューマー市場がいずれの地域でも最大のAR/VR支出分野となり、米国および西欧の、2番目に大きなセグメントは組立製造とプロセス製造と予測している。対照的に、2017年APeJで2番目に大きなセグメントは小売と教育で、時を経るにつれ米国のコンシューマー市場はプロセス製造、政府、組立製造、小売、建設、運輸、およびプロフェッショナル向けサービスに追い抜かれるものとみられるとしている。

APeJでは、2021年もコンシューマー市場が最大の支出分野で、次いで教育、小売、運輸、ヘルスケアが続くという。コンシューマー市場の支出は西欧でも市場を牽引するが、組立製造、小売、およびプロセス製造は予測期間中強い成長を示すとIDCは予測している。

また、AR/VRの投資を最も引き付ける業界のユースケースも、5年間の予測期間において進展し、2017年では最大のユースケースは小売業での展示向け(4億4200万ドル)、現場での組立と安全管理(3億6200万ドル)、プロセス製造トレーニング(3億900万ドル)。そして2021年には、産業設備の保守・メンテナンス(52億ドル)と公共インフラ整備(36億ドル)、小売業での展示向け(32億ドル)などのユースケースが目立つようになるということだ。

対照的に、コンシューマー市場は2021年までARおよびVRゲームが支配的であり、2021年のゲームの合計支出は95億ドルに達するとみられるとしている。2021までの予測期間中に最も速い成長を見せるユースケースとして、実験関連(CAGR 166.2%)、治療とリハビリ(同152.0%)、公共インフラ整備(同138.4%)などを挙げている。

ビューワー、ソフトウェア、コンサルティングサービス、SIサービスを含むVRシステムへの支出は、主にハードウェア、ゲームおよび有料コンテンツの販売により、2017年と2018年はAR関連支出を上回ることが予想され、2018年以降、産業分野でのARソフトウェアとビューワーの導入が進むにつれ、ARの支出が急増するとIDCは予測している。

一方、日本では、AR/VR関連市場の成長は堅調なものの、その成長率は2016年から2021年においては年間平均67.1%と、世界の113.2%に比べるとやや見劣りするということだ。

IDC JapanのPC・携帯端末&クライアントソリューション シニアマーケットアナリストの菅原啓氏は、「視覚による情報行動に革新的な影響をもたらすAR/VR技術の導入は、イノベーションを実現する上での重要な鍵となることは明らかである」と述べ、「現段階ではコスト面やコンテンツ内容での懸念材料が根強いのも事実だが、だからこそ、今この段階で採用・導入を進めることは、今後の技術革新やハードウェアの普及を考えると、企業にとって極めて大きなアドバンテージとなるだろう」と提言している。